地球温暖化の責任は人間にある

IPCC第6次評価報告書第一作業部会(自然科学分野)から

【世界平均気温の年平均変化 観測値ならびに人為・自然起源両方の要因を考慮した推定値(上)および自然起源の要因のみを考慮した推定値(下)、いずれも1850~2020年。  IPCC評価報告書から】

【世界平均気温の年平均変化 観測値ならびに人為・自然起源両方の要因を考慮した推定値(上)および自然起源の要因のみを考慮した推定値(下)、いずれも1850~2020年。  IPCC評価報告書から】

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)はこのほど、第6次評価報告書のうち、第一作業部会(自然科学分野)の報告書を公表しました。既に様々なメディアでも報道されていますが、ロイターは、「地球温暖化が手に負えなくなる状況に危険なほど近づいており、人類に責任があることは疑う余地がない」と指摘し、「人類にとって非常事態だ」との国連のグテレス事務総長声明を伝えています。
同評価報告書の概要は下記の通りです。
https://www.mext.go.jp/content/20210809-mxt_kankyou-000017273_2.pdf

同評価報告書は今年11月にスコットランドのグラスゴーで開催される国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で討議され、今回の自然科学分野の科学的知見などをもとに、積極的な気候変動対策を練り上げ、それに必要な資金を調達も検討されることになると思います。ただし、世界各国がどこまで本気で対処するのか、総論賛成各論反対といったこれまでにもみられた対応に終始するようだと効果的な対策が打ち出しきれないという恐れもあります。

グテレス事務総長は、「IPCC第一作業部会報告書は、人類への赤信号だ」、「私たちが今、力を結集すれば、気候変動による破局を回避できる。しかし今日の報告がはっきり示したように、対応を遅らせる余裕も、言い訳をしている余裕もない。各国政府のリーダーとすべての当事者が、COP26の成功を確実にしてくれるものと頼りにしている」と述べています。

現在、世界で頻発している様々な自然災害、例えば記録的な猛暑や熱波、想定を超える豪雨や次々と発生する大型台風、河川氾濫などによる大洪水や土砂崩れ、氷河や極地での陸氷の減少、極地での海氷の減少、シベリアに顕著な永久凍土の融解、広域で発生する干ばつ、頻発する森林火災、森林における大規模な虫害被害など・・・。
同評価報告書では、これらの自然災害の主たる原因が人間活動によってもたらされていると断定しています。

こうした気候変動問題は、人間だけでなく、地球上の多くの動植物の生息環境に深刻な影響をもたらしています。また、農業への影響は直接的で、例えば大規模干ばつや洪水による農業生産の悪化に伴う食糧需給逼迫問題を加速させています。シベリア永久凍土の融解は膨大な数量の二酸化炭素等を大気に排出し始めています。

海面水位の上昇については、さまざまなシナリオによるシミュレーションが行われました。それによると、今世紀末までに2㍍上昇する可能性も、2150年までに5㍍上昇する可能性も排除できないとされています。万が一そのような事態になれば、2100年までにほとんどの沿岸部は浸水し、数百万人の生活が脅かされることになります。

同評価報告書から一部を抜粋しました。
気候の現状「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことは疑う余地がない。大気、海洋、雪氷圏および生物圏において、広範囲かつ急速な変化が表れている。気候システム全般にわたる最近の変化の規模と気候システムの側面の現在の状態は、何世紀、何千年もの間、前例がなかったものである。人為起源の気候変動は世界中のすべての地域で、多くの気象および気候の極端現象に既に影響を及ぼしている」

将来ありうる気候「世界の平均気温は、少なくとも今世紀半ばまでは上昇を続ける。向こう数十年の間に二酸化炭素およびその他の温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に地球温暖化は1.5℃および2℃を超える。気候システムの多くの変化は、地球温暖化の進行に直接関係して拡大する。この気候システムの変化には、極端な高温、海洋熱波、大雨、いくつかの地域における農業および生態学的干ばつの頻度と強度、強い熱帯性低気圧の割合、ならびに北極域の海氷、積雪および永久凍土の縮小を含む。継続する地球温暖化は、世界全体の水循環を、その変動性、世界的なモンスーンに伴う降水量、降水および乾燥現象の厳しさを含め、さらに強めると予測される。
二酸化炭素排出が増加するシナリオにおいては、海洋と陸域の炭素吸収源が大気中の二酸化炭素蓄積を減速させる効果は小さくなると予測される。過去および将来の温室効果ガスの排出に起因する多くの変化、特に海洋、氷床および世界の海水水位における変化は、百年から千年の時間スケールで不可逆的である」

リスク評価「氷床の崩壊、急激な海洋循環の変化、いくつかの複合的な極端現象、将来の温暖化として可能性が非常に高いと評価された範囲を大幅に超えるような温暖化など可能性の低い結果も排除することができず、リスク評価の一部である」

将来の気候変動の抑制「自然科学的な見地から、人為的な地球温暖化を特定のレベルに制限するには、二酸化炭素の累積排出量を制限し、少なくとも二酸化炭素正味ゼロ排出を達成し、他の温室効果ガスも大幅に削減する必要がある」

当社はこのほど「クボデラSDGsチャレンジ2021」を公表し、地球温暖化対策などに関し、私たちができる範囲での取り組みを宣明させていただきました(下記に添付)。特に二酸化炭素吸収源である森林を健全なものとし、循環可能な資源として、森林から多面的な価値を引き出していく活動に取り組んでいきます。今回公表された評価報告書を読むと、そうした取り組みが、待ったなしの段階にあることを改めて痛感させられるところです。
https://kubodera.co.jp/SDGs/
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