「森林・林業基本計画」案が示されました

~令和12年の国産材利用量4200万立方㍍を目指す~

【手入れが進んだ人工林の様子】

【手入れが進んだ人工林の様子】

林野庁は2021年4月23日、林政審議会(会長=土屋俊幸東京農工大学名誉教授)に、新たな「森林・林業基本計画」の原案を示しました。森林・林業基本計画とは、森林・林業基本法に基づき、我が国の森林・林業施策の基本方針を定めるもので、森林・林業をめぐる情勢の変化等を踏まえ、おおむね5年ごとに変更されます。
前回は平成28年5月に策定されました。同案は閣議決定を経て成立します。特に森林・林業に関する今後の政策の基本となり、この計画を踏まえ具体的な政策や事業が策定されることになります。4月26日から5月14日までパブリックコメントの募集を行っています。

森林林業基本計画.pdf

同計画案ははじめに、前回計画に基づく施策の評価等が行われ、そのあとに「森林の有する多面的機能の発揮ならびに林産物の供給および利用に関する目標」、「森林および林業に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策」と続きます。

下表は「木材供給の目標および用途別の木材利用量の目標」です。

本格的な国産材時代が到来し、国産材を原材料とした大型製材工場が増加し、外材に原材料を依存してきた針葉樹合板工場も国産材への原材料シフトを進めてきました。また、構造用集成材や2×4製材の分野でも国産材を原材料とする動きが顕著です。
さらに再生可能エネルギーの固定価格買取制度(Feed-in Tariff)を背景とした木質バイオマス発電用燃料という新たな需要分野が登場し、国産材利用量を底上げしてきました。
また、CLTや大断面構造用集成材、構造用LVLに代表的ですが、主に非住宅木造建築向けで新たな木構造技術が開発され、ここでも国産材が主要な原材料となっています。このほか、国産材の輸出も新たな需要分野になりつつあります。

同計画案では令和12年には国産材利用量4200万㎥を見込んでいます。これは令和元年比で1100万㎥、ほぼ35%の増加となります。
令和元年の総需要に占める国産材利用量は38%まで上昇してきました。同計画案では令和12年には48%まで高まるとの見通しです。現在の輸入木材価格高騰と供給不安が慢性化するようだと、国産材利用率は50%以上に高まるかもしれません。

では国産材供給は問題ないのでしょうか。現状は輸入木材の供給不安と価格高騰に対し、国産材製材は十分な代替供給機能を果たしておらず、同様に急激な価格の高騰と供給制約が起きています。木材価格を安定させるに足る国産材供給体制の整備にはまだ時間がかかるといえそうです。
下表は同計画案で示した「目標とする森林の状態」です。

森林面積に変化はありませんが、立木は成長するので森林の総蓄積量は令和22年の段階で61億8000万㎥と令和2年比で14%増加するという見通しです。森林蓄積量の推移は、昭和41年18億8700万㎥、昭和51年21億8600万㎥、昭和61年28億6300万㎥、平成7年34億8300万㎥、平成14年40億4000万㎥、平成24年49億100万㎥、立木の成長に合わせて大幅に増加しています。特に昭和から平成にかけては、まだ主伐比率が小さく、多くは除伐や間伐だったことから蓄積速度が速かったとも言えます。

この表で注目されるのは、年間の森林成長量が令和2年で7000万㎥、その後も年間6300万~6500万㎥で増加が見込まれるという点です。前記した年間8000万㎥以上の木材総需要には届きませんが、それに近い成長量です。国産材利用量対比では年間成長量のほうがはるかに大きく、この数字だけ見ると、製紙原材料などを含め、日本の木材需要の大半は国産材で賄えるのではということになります。

ただ、森林蓄積量については注意してみていく必要があります。蓄積量とは人工林、天然林を問わず、すべての森林の合計ですが、実際には手入れが出来ていない森林、林道や作業道などのインフラ整備ができておらず伐出が困難な奥地森林、需要面で活用が難しい森林、採算性が乏しい森林等あり、蓄積量のすべてを利用できるわけではありません。

また、森林蓄積は大きいとしても、それを伐採、搬出する能力が追い付いていません。林業従事者の高齢化、後継者難の問題は解決できていません。国は高性能林業機械や最新のテクノロジーを活用した森林計測などの導入を働きかけていますが、補助金があるにしても導入にかかる一定費用、さらに維持費用は自己資金を必要とします。また、前記した林道、作業道の敷設負担、徐間伐をはじめとした森林手入れ負担等も課題です。

戦後植林された国産材立木の多くは50年生以上となり、間伐から主伐への移行が目前です。国は、主伐後再造林するという施業のパッケージ化を推進していますが、長期にわたる林業の安定的な採算性が確立されないうちは、主伐再造林の定着も容易ではないと思います。
そのことは過去、植林に際し、立木の成長という確実な含み資産の拡大を期待しながら、現実にはそうはならなかった林業家の苦い思いが少なからず影響しています。
これからの林業は、主伐再造林が適切に実施されてはじめて持続可能な森林資源を実現するわけで、主伐への移行は新しい森林・林業基本計画でも最重要課題となるでしょう。

同計画案では国産材時代が到来し、今後への期待の高まりが随所にみられる一方、林業を中心とした様々な課題およびその対策に関しても具体的に記載されており、今後の森林・林業政策に反映されてくると思います。

国は気候変動対策として、2050年カーボンニュートラル実現という大目標を提示しました。この目標を実現する切り札としての森林および木材製品の果たすべき役割は極めて大きいといえます。同計画案でも触れていますが、実際の炭素固定機能に関する公的な算定が期待されるところです。

同計画案では、森林・林業・木材産業を原動力とした山村地域の活性化にも触れています。私たち木材事業者はどこで素材が生産され、製品となって市場に供給されるのか、ある程度は理解していますが、一般的にはそうしたことへの理解は薄いのが現実です。真に林業・木材産業を成長産業とするには、そうした地域社会が取り残されない六次産業的な施策のありかたも大切だと感じます。

【吉野の森林の様子】

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