林野庁は全国木材組合連合会を事業主体として、22年7月21日から8月25日まで「国産材転換支援緊急対策事業のうち建築用木材の転換促進支援事業の第二次応募受付を開始しました。第一次は22年6月17日から7月20日までで終了していますが、間髪おかず第二次募集が開始されました。同事業はこれまでロシア材を使用していた建築材を国産材等に木材製品に転換する場合、助成が行われるもので、部材転換、設計転換の2系統に分かれています。詳細は下記URLを参照してください。
https://moku-tenkan.jp/tenkan/index.php
ロシアによるウクライナ侵攻に対する経済制裁の一環として日本政府は22年4月19日、ロシア産単板、木材チップ、丸太の輸入禁止を決定しました。特にカラマツ単板の輸入が停止されたことで強度を要する合板や構造用LVLに影響が出ています。一方、駆け込み輸入によりロシア産アカマツKD羽柄材は港頭や販社倉庫に積み増しされており、現状は品不足には至っていません。とはいえ、一連の経済制裁の影響は確実に出てくると予想され、国産材針葉樹KD羽柄材を軸にロシア材代替の動きは進んでいます。
同事業では、設計の工夫や調達の見直しにより、例えば横架材でロシア産のレッドウッド構造用集成材から杉構造用集成材、下地材でロシア産のオウシュウアカマツ製材から杉製材、面材でラーチ(カラマツ)使用の針葉樹合板から杉100%針葉樹合板へ転換するケース、また工法の転換によりCLTを用いることでロシア材構造材や下地材使用を不要にすることなどが例示されています。
特定の国の木材を国産材等に転換するという政策は平時であれば有りえず、国際貿易紛争に至るものですが、ロシア政府も非友好国に対し、丸太、木材チップ、単板の輸出を禁止する制裁措置を取っており、現在の事態は平時でないとの判断、もっと言えば経済生産の一環ということになるのでしょうか。ロシア材製材を輸入販売している事業者にとっては、それでなくとも厳しい貿易環境下、納得のいかない政策でしょう。
同転換事業は施工者を助成する部材転換、設計者を助成する設計転換に分かれます。対象物件は住宅、非住宅で、木造及び木造とその他の構造との混構造も対象となります。
要件は①横架材、下地材、面材にいずれかにおいて、国産材等の代替材の仕様を通じて、ロシア材を使用していないこと、また、過去に施工した建築物においてロシア材を使用していたと認められること。②主要構造部にCLTを使用し、主要構造部及び下地材においてロシア材を使用していないこと、また、過去に施工した建築物においてロシア材を使用していたと認められること。この2要件を満たす必要があります。
部材転換の助成対象は、横架材、下地材、面材の材積に対し立方㍍当たり2万7000円、主要構造部に使用したCLTの材積に対し立方㍍当たり6万6000円が助成されます。上限は1棟当たり1500万円。同一建築物において設計転換との併用が可能です。申請上限は県単位で5棟まで。
設計転換の助成対象は設計費(意匠設計、構造設計)の1/2で、上限は木造部分の床面積に対し㎡当たり5350円です。