これまで構造計算、壁量計算等の省略が認められてきた建築基準法第6号第1項の4号特例が見直しされることになりそうです。
4号特例という言葉は皆さんもお聞き及びと思いますが、現行の木造住宅(都市計画区域、準都市計画区域内)の比率は、1階建て延床面積200㎡以下が9.9%、1階建て延床面積200~500㎡が0.3%、2階建て延床面積200㎡以下が60.9%、2階建て延床面積200~500㎡が2.7%、実に74%弱が4号建築物に該当します。
建築士が設計していれば確認申請時に構造計算、壁量計算等を省略することができます。ただし、設計士は構造の安全性をチェックする必要があり、この作業をしなくても良いというものではありません。この特例にはプレハブ、2×4工法建築物は含まれず、基本的には木造軸組建築物が対象となります。
この特例が縮小される見通しとなりました。
4号特例は1983年から開始されました。建築行政職員が不足し、建築確認や完了検査が十分に実施できなかったこと、建築士への信頼を前提として確認申請を円滑に実施することを目的としたものです。
しかしながら、4号特例については住宅における壁量計算の偽装問題などを理由に日弁連が廃止を求め、2018年には「4号建築物に対する法規制の是正を求める意見書」が公表されています。同制度を活用した住宅において、不適切な設計等が行われ重大な瑕疵が発生しても、4号特例により、構造計算書等の任意の資料提出がない限り、資料の取得が困難となり、被害者の立証を阻んできた経緯があるからです。
建築現場の混乱等実務への影響から4号特例廃止に対する反対意見もあり、2010年には4号特例の継続が決まりました。しかしながら、2020年の改正建築士法で、建築事務所に対し、4号建築物を含めたすべての建築物について、配置図、各階平面図、構造計算書等、工事監理報告書等の保存が義務付けられています。
住宅産業界でも既に構造計算を実施している事業所は4号特例の廃止を主張しており、全棟構造計算を実施することを差別化材料とする動きも増えています。こうした情勢変化も踏まえ、かねて国土交通省でも見直しが進められてきました。
先ごろ公表された同社の社会資本整備審議会答申「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方及び建築基準制度のあり方」(2022年2月)でも4号特例見直しに言及しています。
建築基準法第6条第1項は1号から4号まで建築物の種類が細分されており、建築基準法に基づく詳細な規定に適合することが求められています。現行の法第6条第1項は、1号(床面積200㎡以上の特殊建築物)、2号(3階建て以上、延床面積500㎡以上、高さ13㍍以上、軒高さ9㍍以上の大規模木造)、3号(2階建て以上、延床面積200㍍以上の非木造)、4号(前記以外の建築物)です。
このなかで小規模建築物は4号に分類され、設計士が設計した場合、構造計算、壁量計算等を省略する特例が認められています。4号特例の詳細はこれ以外にも多くありますが、焦点となるのは構造計算および壁量計算についてだと思います。
現行の4号建築物の条件は、建築士が設計していれば、木造は2階建て以下、延面積500㎡以下、高さ13㍍以下、軒高さ9㍍以下となっており、前記したように多くの木造住宅が4号特例の対象です。非木造では平屋かつ延床面積が200㎡以下の建築物が4号建築物の対象となります。
この4号特例に関する改正案が22年4月に閣議決定されました。法律の公布後、3年を超えない範囲で政令の定める日から施行することになっており、おそらく2025年6月ごろには何らかの改正が行われ施行される見通しです。
改正では、4号特例である壁量計算や構造図が省略できるのは平屋建て・延面積200㎡以下となります。また、構造計算書が省略できる建物は300㎡以下、省エネ化で重量が増していることへの対策として壁量計算の見直しも盛り込まれます。一方、許容応力度設計をした構造計算書が必要な建物の延床面積も従来500㎡以上だったものが300㎡以上に厳格化されることになりそうです。
法第6条第1項の構成も1号から3号に再区分される見通しです。改正案では1号(床面積200㎡以上の特殊建築物)、2号(2階建て以上、延床面積200㎡以上)、3号(それ以外の建築物)とし、特例を受ける現行の4号建築物の対象は大幅に縮小される見通しです。
改正されると建築物の構造種別を問わず2階建て以上または延床面積200㎡以上の建築物は壁量計算、構造図等が必要となります。確認申請に壁量計算図表等の法律の仕様規定を満たしている旨の計算書、伏図、軸組図、基礎伏図、基礎断面リスト等の構造図面一式が必要になります。ただし、300㎡以下の一般的な2階建て木造住宅については構造計算書の提出までは求められないと解釈できます。