国産材時代、活用することで資源循環に
[国産材針葉樹全体 架線を使った丸太の集材]
国産材を取り巻く情勢は大きく変わってきました。国産材時代の到来です。
戦後植林された針葉樹人工林が伐期を迎え、自給できる再生可能な国内森林資源を積極的に活用していこうという考え方、さらに地球温暖化対策における森林のCO2吸収源としての重要な役割がクローズアップされてきました。戦争で荒廃した山野に先人たちが1本ずつ苗を植え、森林を手入れし、全国に緑がよみがえったのです。敗戦後の日本人の気持ちを一つにするかつてない国民運動でもありました。
日本に限らず、戦後植林された人工林は一様に伐期を迎えています。人工林資源を有効に活用し、地球温暖化抑制にも寄与していく。日本に限らず、先進国に共通した考え方であり、施策の方向性でもあります。欧州では公共建築物の木造化、木造の非住宅中高層建築、大規模木造建築が一気に進み始めています。
大型木造建築物は、木材に貯蔵されていた炭素を引き続き、建物で貯蔵することにより、超長期にわたり炭素を固定します。木材製品の製造にかかるCO2の発生は極めて小さく、解体廃棄された木材は、各種木質ボードやバイオマス燃料に再利用されます。21世紀はまさに木材の世紀になると思います。
[国産材針葉樹全体 国産材で内装木質化された文教施設]
日本でも国産材を様々な場面で積極的に使用していくことが大きな流れとなっています。施策面での大きな変化は、平成22年10月に制定された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(木材利用促進法)です。
この法律が制定される以前は、昭和34年に日本建築学会が公共建築物の木造禁止を決議し、以後、多くの建築物から木造が排除されていきました。木材利用促進法はこの呪縛を解くものでもありました。
人工林資源の成長に加え、施策面の後押しもあり、国産材を活用するという動きは、今後、一層活発になってくると思います。
国産材をはじめとした木材を活用しやすくする建築法制度の緩和、中高層木材建築のための新たな設計手法の登場、CLTに代表される革新的な木材加工技術の開発など、森林・林業・木材産業成長産業化への期待を背景に、次々と動き出しています。
国産材需要についても、製材にとどまらず、合板や集成材原材料、木質バイオマス燃料など大きく広がり始めています。具体的な研究成果が待たれる木材由来の新素材「セルロースナノファイバー」も必ずや注目を集めると思います。
近年、木材の快適性に関する科学的な研究成果が多数発表されています。具体的な研究成果の紹介は後ほどとしますが、木材に囲まれた居室空間がなぜ、心地よく、気分が落ち着くのか、森林を散策するとなぜ、気持ちがよいのか、森林や木材が大変重要な役割を果たしていることは明らかです。