桧大径木代替で全国の国宝級社寺建築に
[半製品を何年もかけて乾かす]
ケヤキの特徴を説明している業者のホームページに次のような記述がありました。ケヤキの難しさをよく表していると思います。
「ケヤキは、割れなどが懸念されるため、人工乾燥することが難しく、自然乾燥をするしかないのですが、自然乾燥の速度は1年に3㌢程度。積もっている埃の分だけ価値が増すとさえ言われます。もちろん、未乾燥材は、割れや狂いの恐れがあるため使うことはできません。ゆえに乾燥するほど材料の価値が上がっていきます」。
ケヤキ(ニレ科)は日本を代表する広葉樹で、北海道を除く全国に広く分布しています。武蔵野のケヤキがよいとされていますが、原木市場には全国から逸品が出材されてきました。かつては1本1億円を超えることもあり、最近も6000万円を超える取引が話題になりました。特に茨城県の広葉樹原木市場には全国から多くの荷物と銘木関係者が参集します。
[ケヤキ尺角などを売る]
立木の成長が早く、街路樹や防風林、屋敷林としても多くのケヤキが植栽されてきました。日本の広葉樹の中では現在、最も供給力が安定した樹種です。
ケヤキは古くから実に様々な場面で用いられてきました。神社仏閣の柱材、城や城門、橋梁の構造材は、ケヤキ普請の歴史的建築物が多数あります。現存する重要文化財指定の江戸城城門の多くはケヤキ普請です。ケヤキは構造材にも使われてきた数少ない広葉樹です。
木造住宅の柱、梁、家具、造作・建具材、彫刻材、店舗看板、生活雑貨など幅広い用途に用いられてきました。今も田舎普請の和風住宅で、大きく美しいケヤキの上り框を見かけます。和太鼓の胴も多くはケヤキで設えます。
[ケヤキ普請の玄関框、奥はケヤキの大黒柱]
残念ながら住宅の洋風化に伴い和室が減少し、住宅建築材としてケヤキを使用することが少なくなっています。その一方、ケヤキの独特な木目や木味を好む海外の需要家も増えています。
近年、ケヤキ短尺材の多くはアジア市場に原木で輸出され、床材などの内装材に加工され、アジア市場で販売されています。
ケヤキの最大の特徴は頑強なこと。社寺や城郭など大型木造建築構造材にも使われてきたほどです。そして、意匠性に富んだ外観です。ケヤキ専業者に伺うと、玉杢、泡杢、笹杢、牡丹杢、葡萄杢といった言葉を聞きます。製材したときに現われる輝きを持った艶も特徴です。固く摩耗性、耐久性に優れ、供給安定性もあり、改めてケヤキの良さを評価する時代が来ると思います。
[ケヤキなど日本で製材された銘木を海外の展示会に出展]