【MOCTIONの多摩産材コーナー】
国産木材の魅力発信拠点「MOCTION」を訪問しました
東京都は、2020年12月、東京都産材をはじめとする国産木材の魅力と活用方法を幅広い層に提案する常設の発信拠点「MOCTION」を開設しました。
https://moction.jp/
東京都が運営し、公益財団法人東京都農林水産振興財団が管理するこの施設は、新宿パークタワーで様々な木材・建材事業会社などが集う「リビングデザインセンターOZONE」5階にあります。周辺には建材・住設メーカーのショールームも多数あり、週末にはショールーム巡りのご夫婦や家族連れも大勢来場します。来場者は60%がエンドユーザー、40%がメーカー関係だそうです。
午前10時半から午後6時半まで開館しています(休館日は水曜日)。MOCTIONの濱田道昭さんに館内を案内していただき、同館の役割などをお聞きしました。
MOCTIONの館長・プロジェクトリーダーには隈研吾氏(隈研吾建築都市設計事務所)が就任されました。同館の設計デザイン(施設、家具)は、新進気鋭の建築家である宮崎晃吉氏(株式会社磯崎新アトリエ勤務後設計事務所HAGI STUDIOを開設)です。
都市の木質化は、地球温暖化の対策として重要な役割を果たします。木は成長の過程で大気中の二酸化炭素を吸収し、木材として使っている間は木材内部に炭素を貯蔵し続けます。都市の木質化は第二の森林づくりと言われるゆえんです。都市の木質化はそこで働く人、住まう人のストレス緩和に役立ちます。
積極的に国産材を使うことで都市の周囲の森林を健全な状態に保つことにつながります。健全な森林とすることで山林の土砂崩れや洪水などの災害を抑止します。MOCTIONでは「都市の木質化はファッションや綺麗事ではなく、自分の生活の根幹に関わる問題でもあるのです」と指摘しています。
そして、「まずは人の手に触れるような取り組みやすい部分から木質化を進めていけば、やがて東京は世界に類のない景観を持った木の都市に生まれ変わることができるのです」と述べています。
隈研吾館長は「20世紀の都市ってある意味、超高層のニューヨークモデルでずっと来て、世界に広まったわけですよね。それに対するカウンターとして、東京の新しいモデルを立ち上げることができれば、21世紀のいろんな都市のモデルになる可能性も十分あると思いますね」と語り、新型コロナ感染症問題も踏まえ、「オフィスの木質化は、効率性を取るか木を取るかって話じゃなくて、我々の効率性の定義自体が変わってきていることを考えたほうがいい」(MOCTIONパンフレットから)と述べています。
館内は約半分のスペースが東京都の多摩産材を活用したオフィス空間の提案を行っています。多摩産材を活用したオフィス空間提案では、東京都の製材各社が木質化に協力しているそうです。企業のオフィス空間を木質化することにより来客が驚くインパクト効果、また木の香りがくつろぎの空間をつくり出すことで社員が快適に業務をすることができるというメリットもあります。
ホームページには、全国知事会でも国産木材振興の旗振り役となっている小池百合子知事が期待を込めてMOCTIONをPRする動画もあります。
意外だったのが、東京都には森林が豊富にあり、多摩産材として普及活動をしているものの、これまで一般の人たちにそうしたことが認知されてこなかったという点です。現在、東京の木をもっと多くの人に知ってもらうための作戦を練っているとのことで、期待したいと思います。
同館では半分のスペースを全国の国産木材産地に提供し、PRを行っています。伺ったときは青森県の木を使った空間提案の最中でした。この後、東京都の木を使った特設展示が予定されているようです。各都道府県の展示期間は2~4週間で、これまでに高知県、栃木県、和歌山県、群馬県などが出展しました。
青森県では、特に地域の特産である南部あかまつを用いたテレワーク個室空間、コワーキングスペース、パーテーション型書架などが展示されていました。既に1年後までほぼ埋まっているとのことです。
濱田さんは「木はみんな同じだと思っている人が多いですが、全国の木にはそれぞれ特徴があります。実際に見て触れてもらい、本物の木を体験してもらうことが施設の目的です。来場された方々と一緒に適材適所で木の使い方を考えていきたいと思います」と語ります。
東京都では、東京都産材だけでなく、全国の国産木材の利用拡大に向け、「モクコレ」を継続開催し、現在では全国の大半の都道府県が出展する一大イベントになっています。新型コロナ感染症問題で現在は中断していますが、国産木材を多くに人に知ってもらうための画期的な取り組みだと思います。常設型の木材PRの場ができたことは木材業界にとっても大変喜ばしいことです。ぜひ、一度MOCTION会場を訪れることをお勧めします。
【47 JAPAN WOOD】
【青森県の展示コーナー SOMA青い森の県産材製品】