木の哲人講座~造作材~  塩ビクロスから無垢の木材へ

[無垢の木材で全面を仕上げた事務所]

クボデラ株式会社では、内装に本物の木を積極的に使用していくことを提案いたします。

内装壁仕上げ材は現在、圧倒的に塩化ビニル樹脂系壁紙で占められていますが、私たちは化学製品由来ではない天然由来の内装仕上げ材を用いることで、居住環境が改善され、人の健康にも良い作用を起こすことを知っていただきたいと考えます。もちろん、内装のすべてに木材を使うということではなく、適材適所で、内装の木質化をご検討いただければと思います。

内装壁紙市場に占める塩化ビニル樹脂系壁紙の出荷量は、2018年度で6億平方メートル強(日本壁装協会集計)と、国内で製造される壁紙全体の90%を占めます。次いでプラスチック系壁紙が6000万平方メートルで9%。この2種類で国内の壁紙出荷の99%、ほぼすべてを占めているのが現状です。

建築物の内装壁市場は、居室ごとの内装壁面積の推定が困難ですが、天井を除き推定8億平方メートル(天井を除く)前後と考えられます。また、天井部位(推定1億5000万平方メートル)でも塩ビ樹脂系製品が高いシェアを有すると考えられます。
新設住宅需要の増加に伴い建築材料も、低コストで供給が安定し、職人技術なしで容易に施工できる工業製品需要が高まりました。塩ビ樹脂系壁紙は、工場量産による圧倒的な価格優位性と供給安定性を有し商品物流網も整備され、優れた競争力を発揮しています。

しかし、私たちを取り巻く情勢は、SDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)の時代を迎え、企業活動の在り方はもとより、商品の価値も多様化しています。

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塩ビ樹脂系壁紙は、石油由来の原材料から製造される化学製品であり、建築物を解体した際に焼却処分が難しく、産業廃棄物としても廃棄しにくいこと、建築物で火災が発生した場合、有毒ガスを発生させる恐れがあること、頻繁に意匠が変更されることから、例えば5年後に壁紙の一部が剥がれ補修しようにも、当時の意匠が既に廃版となっている可能性があり、全面的な壁紙張替えを余儀なくされることなどの問題があります。

また、多くの塩ビ樹脂系壁紙は透湿性能がなく、室内の湿気を透さないため、家を蒸らし、室内結露を発生する恐れがあるといわれます。結露が発生すると室内空気環境を悪化させ、細菌やウィルスの繁殖をもたらす恐れがあります。

木製材料による内装壁材は、こうした諸問題点を解決します。

木材は透湿性能に優れ、室内空気環境を改善する機能があります。室内の湿気を木材が吸放湿することにより、一定の湿度を保ち、室内結露問題を改善します。漆喰や珪藻土、土壁などの自然素材仕上げ材も同様です。

木製内装材は、建築物の滅失後も、焼却せずに破砕し、パーチクルボード原材料や木質バイオマス発電燃料などの活用する方法もあります。その結果、木材内部の炭素成分は焼却により外部に放出されることなく、引き続き製品内部に炭素を固定し、地球温暖化対策に寄与します。製造過程で費やすエネルギー消費量が小さく、CO2の発生量が少ない点も木質材料の強みです。

建築物の内装に木材を使用することが人体にどのような影響をもたらすかという観点から、現在、多くの科学者が、研究に取り組んでおり、測定や実験に基づく科学的な知見も示され始めています。

木材に触れ、嗅いだ時の心地よさは何によるのか、血圧・脈拍数、交感神経活動、副交感神経活動、ストレスホルモン等を測定することで人体の変化を測定し、木の香りを嗅いだ際に人がリラックスすることが明らかになってきました。
低密度で熱伝導率が低く、これが木材のあたたかい感触につながるとの観点から、木材、プラスチック、金属に触れたときの人間のストレスを測定(収縮期血圧測定)し、木材は大幅にストレスを軽減することを明らかにした研究者もいます。
クロス張りと木質の居室において行った実験では、ストレスの増加をもたらす脈拍数はクロス張り居室のほうが極めて高く、リラックス状態をもたらす副交感神経系活動は木質居室のほうがかなり高かったことを明らかにしています。
また、桧油の香りをアロマ加湿器で発生させ、被験者が睡眠中に香りを嗅ぐと免疫力はどう変化するか3日間にわたり測定したところ、免疫細胞を活性化させるNK活性が明らかに上昇し、ストレスの指標である尿中ノルアドレナリンが減少したそうです。

木材の中心的な臭い成分であるαピネンを含んだ環境下で、マウスに移植したがん細胞の増殖が40%抑制されたとの報告、木造校舎はRC造校舎に比べ、生徒がインフルエンザに罹りにくく、授業中の生徒の「注意集中の困難」、「眠気とだるさ」測定でも、木造はRC造に比べ好結果が出ています。先生の疲労感測定でも明らかに木造が良い結果だったそうです。
また、学校で使われる学童机の免疫性を研究では、杉の机が金属製の机に比べ免疫力が向上したとの研究報告があります。

築物に積極的に木材を使用することのもう一つの重要性は、人類の生存にも影響してくる地球温暖化対策です。

森林は光合成により大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収し酸素を放出します。その際、吸収した二酸化炭素を炭素化合物として植物内に留め置く機能もあります。

森林の重要性は第一に、酸素供給元であること、第二に吸収したCO2を炭素化合物に変換し超長期にわたり立木の内部に貯蔵していくことです。立木を伐採したとしても、木材製品として住宅や雑貨等に活用し続けることで炭素は解放されず長期貯蔵されます。
地球温暖化の原因は、温室効果ガスの主役である二酸炭素の大気中濃度の上昇を原因とするもので、特に産業活動の活発化、急激な人口増加などで、化石燃料燃焼量が劇的に増加し、大量のCO2が大気中に放出され、温暖化を加速させてきました。
大気中に放出されたCO2の主要な吸収元は、海洋及び森林です。地球温暖化という観点で、森林は酸素供給、CO2吸収という重要な役目を担っているのです。

理想的な姿は、樹齢を重ね光合成機能が低下した立木を伐採し、伐採した跡地に植林し、除伐、間伐を経て、再び主伐し、森林として再造林、再び活発な光合成を促していく。この循環を大切にし、立木から製造された木材製品を活用することで、社会生活の中において炭素をさらに長期固定させていくことです。

私たちは、木が唯一の再生可能な天然資源であることの重要性を多くに人に知っていただきたいと考えます。


[クボデラ㈱首都圏サービスセンターの木工加工設備]

次回からは造作加工を主体とした木工機械をご紹介します。クボデラ㈱の木工機械設備を中心に、技術革新が進む木工機械の役割についてみていきたいと思います。

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