木の哲人講座 木工機械① はじめに


【木地師の里 東近江の木工作業の様子 日本森林学会ホームページから】

木の哲人講座【樹種編】でも述べましたが、日本は森林率が70%近く、世界有数の森林国です。人々は身近な森に出向き、木を伐採し、薪や木の実を収穫し、木で住居を建て、生活用具となる様々な木工品をつくってきました。
お椀、箸、杓文字、お盆、お櫃、柄杓、臼・杵などの食に関する用具、桶、樽、箪笥、机、棚、文具、櫛、下駄、行灯、提灯といった生活に関する用具はすべて木から生み出されてきました。

木は生活に欠かせない火を得るための大切な燃料としての役割も果たしてきました。枝葉や薪からはじまり、木炭などの薪炭材へと製造技術も発展していきました。
森の動植物を収穫することは、人々の日々の糧に直結していました。

古来、日本の住居はすべて、木と土と石と紙と、多少の金属で設えられました。当時の大型木造建築の代表である社寺、城郭、橋梁、櫓など、すべて木造です。まさに木との深い結びつきが日本独自の文化を形作ってきたといえます。

古代から近代にいたるまで、長い間、木材加工は人の手に頼ってきました。生活のほぼすべてを木に依存してきた日本人の木材を加工する技術は、人々の生活に根差しながら驚きの発展を遂げました。
木工職人は、斧(おの)、鑿(のみ)、鋸(のこ)、鉋(かんな)、鑢(やすり)、錐(きり)、楔(くさび)、曲尺(かねじゃく)などの道具を駆使し、建築材や生活用具を製作してきました。
そして、指物(さしもの)、彫刻、刳物(くりもの)、挽物(ひきもの)、曲物(まげもの)、箍物(たがもの)といった日本独自の木工技法と、それに携わる職人の領域を生み出していきました。例えば工芸品を製作する指物師、轆轤を使ってお椀などを製作する木地師などです。また、木地師が挽いた木地に漆を塗る塗師、金箔貼りを行う箔押師などの仕上げ職人も登場し、伝統技能として今に受け継がれています。


【東近江の木地師 今も手作業で製作しています】

現存する歴史的な社寺建築や数寄屋建築を見れば一目瞭然ですが、木造建築における大工技術も、世界に類をみない高い技術力を培ってきたと思います。大工や木工職人は長年の経験と伝承のなかで、木の特徴を最大限に生かすという考え方を体系的に積み重ねてきました。
しかし、考えてみてください。製材、木工機械設備のない時代に、職人たちは如何にして角材、薄板、小割材などを生産することができたのか。例えば、今も流通する厚さ7ミリの杉格天は古来、どのように製材されたのでしょうか。

本欄ではこれから、木工に関する機械設備を紹介するのですが、動力も機械設備もない時代に、私たちの祖先が、道具だけで木を精密加工し、美しく仕上げてきたことを想像するだけで、わくわくしてきませんか。

機械による木材加工が本格的に始まるのは明治期以降です。それまでは精々、水車を動力とした木工機械まででした。和歌山県庁が作成した紀州材の歴史によると、「明治8年(1875年)、産業社という民間企業が、天竜川下流に、蒸気を動力源とし、竪鋸2台、円鋸1台という設備で製材工場を建てました。これは、民間企業の中では全国で最初の機械製材所でした。
和歌山県内で最初の機械製材所は、明治21年(1888年)、新宮市(当時新宮町)の松江武次郎が鵜殿村に設置した竪鋸2台の製材工場でした。また、明治30年代には相次いで10ほどの工場が誕生しました。大正7年(1917年)には、下津町に当時、東洋一と呼ばれた龍王木材工業株式会社の製材工場が中西進重郎によって建設されました。この製材工場では、蒸気692馬力を有し、従業員255名、竪鋸・丸鋸55台、帯鋸2台、目立機10台が稼働していました。セイロン向けの茶箱が主な製品でした」との記述があります。

ゼネコン大手である清水建設の木工作業場として1896年、木場に開設された東京木工所は、当時から最新鋭木工設備を設置してきましたが、蒸気動力の製材機設置が1909年、ホットプレスや高周波加熱接着装置の設置となると1955年以降です。
木工分野は長年にわたり膨大な数の職人の体系が確立されており、機械化する必然性が希薄だったとも言えます。大工不足と高齢化を背景に木造軸組住宅の構造材等の加工が本格的に機械プレカットに移行していくのも1990年代以降ですから、木工についても本格的な機械化となると戦後しばらくしてからということになります。


【クボデラの首都圏サービスセンター 目利きによる厳格な検査】

木材関係の機械設備は大別すると、丸太やそれに類する半製品から角材や板材などの製材品を生産する「製材機械」木材を単板の繊維方向がほぼ直交するように接着構成された板材料を製造する「合板機械」木製家具、建具などの木製部材を加工するための「木工機械」があります。

JISでは、⑴製材機械、⑵集成材機械、⑶合板機械、⑷パーティクルボード機械、⑸ファイバーボード機械、⑹木工機械の6つの木材加工機械について、それぞれ規定しています。
木工機械については、⒜木工のこ盤、⒝かんな盤、⒞木工フライス盤、⒟ほぞ取り盤、⒠木工せん孔盤、⒡木工旋盤、⒢組合せ木工機械、⒣サンダ、⒤木工レーザ加工機械、⒥木工接着機械、⒦接合機械、⒧複合機械、⒨塗装機械、⒩木工乾燥機械、⒪木工工具仕上機械の15項目に分類されています。
木材を材料とする部材の種類は多岐にわたるため,JISによれば木工機械は176種に分類されています。木材は切削しやすいので金属用工作機械の約10倍の高回転数,高速送りが可能です。

近年では、NC(Numerical Control=数値制御)ルータや、複数の刃物を自動で交換できる装置を持ちNCプログラミング制御に従って穴開け、平面削り、曲面加工などを1台でこなせるマシニングセンターのような複合機械も登場しています。マシニングセンターをはじめ高性能木工機械はドイツが有名で、アジア勢の台頭もありますが、世界をリードしています。ドイツのハノーバーで各年開催される国際木工林業機械見本市LIGNA(リグナ)はドイツ機械工業連盟などが主催し、林業・木材加工機械に関する世界最大規模の展示会です。


【ホマッグのNCルータ 首都圏の木材加工事業所工場】

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