日本学術会議農学委員会林学分科会(委員長=丹下健東京大学大学院農学生命科学研究科・教授)は先ごろ、「地球温暖化対策としての建築分野での木材利用の促進」と題する提言を取りまとめました。地球規模の気候変動問題で、森林・林業・木材産業、そして木材製品が果たすべき役割について、課題を含め多方面から考察した提言です。
地球温暖化対策としての建築分野での木材利用の促進.pdf |
はじめに、「人間活動に起因する気候変動が地球規模での重大な環境問題になっている。パリ協定では、21世紀後半には温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指している。その実現のためには、省エネ技術の革新による温室効果ガス排出量の大幅な削減とともに、森林吸収源の強化が不可欠である。森林の炭素蓄積量を増やすだけではなく、木造建築物などの木材に蓄積された炭素量を増やすことも吸収源の強化となる。日本学術会議は林業・木材産業の成長産業化とともに地球温暖化緩和策の促進に資することを目的として、建築分野での木材利用の促進を加速度的に進める」と述べています。
特に、「中高層建築物での木材使用量を増やすために、木材と金属やコンクリートなどを効果的に組み合わせた複合部材の開発やそれを用いた建築技術の革新、新たな木質部材の規格整備、優れた環境性能を客観的に示す指標の導入を積極的に進め、消費行動への働きかけを図る必要がある。耐震、耐火、遮音、耐久性なども担保した、科学的な根拠に基づく建築分野への木材利用のための研究のさらなる推進が必要である」、
また、「大気温室効果ガス濃度の上昇を抑制し、気候変動抑止を実現するためには、森林と木材の吸収源機能を最大限に活用することが必要である。そのためには、森林資源の造成とともに、利用期間の長い建築物への木材利用の両立を図ることが必須である。今世紀半ばでの温室効果ガス排出量の実質ゼロに向け、森林並びに木材の吸収源機能の強化に向け提言を行う」と述べています。
最後に3つの提言を掲げています。このうち、建築の役割については、「日本は木造建築に関して長い歴史を有する国であるが、中高層木造建築物の建設については、欧米に遅れをとっている。都市における土地面積あたりの木材使用量の増大には、中高層建築物での木材使用量を増やすことが有効であり、木質部材と金属やコンクリートなどの部材を効果的に組み合わせた建築技術の革新が必要である。また木質部材は自然物であるためのばらつきや燃焼しやすいこと、価格面などでの不利な面がある。建築分野での木材使用量の増大を図るためには、木質部材にあった規格の整備や LCA(Life Cycle Assessment)などの手法を活用して木材の優れた環境性能を客観的に示す指標の提案を積極的に進め、消費行動への働きかけを図る必要がある。耐震、耐火、遮音、耐久性なども担保した、科学的な根拠に基づく建築分野への木材利用のための研究のさらなる推進が必要である」と述べています。
詳しい提言内容は添付PDFをご覧ください。日本学術会議の提言ということで、政策への影響力も大きく、地球規模の気候変動問題への重要な対策としてさらに深掘りされていくものと思います。クボデラ株式会社もお取引先様と連携し、非住宅木造建築に取り組んでいく所存です。