杉資源は先達から受け継いだ全国民資産
[杉 大径木がそろった原木市場]
日本の森林面積は約2508万ヘクタール、このうち人工林面積は約1020万ヘクタール、天然林面積は1348万ヘクタールあります。森林蓄積量は約52億立方メートル、(人工林が33億立方メートル、天然林が19億立方メートル)です。森林率(国土面積に占める森林の割合)は67%、人工林率は41%。森林率はフィンランド、スウェーデンと並び、世界トップ3の森林国です。
米材の輸入元であるカナダ、米国は35%以下ですから、日本の森林率の高さが際立っています。ちなみに中国は20%台前半にとどまり、乱伐による森林率の低下もあり、自国産内の森林伐採に厳しい規制をかけるとともに、木材の輸入依存を急速に高め、今や世界最大の木材輸入国となっています。
国産材素材生産高は、国産材時代を反映して2000万立方メートル台まで戻しています。国は引き続き自給率の引き上げを目指しており、2025年までに4000万立方メートルの素材生産を目指すと宣言しています。
国産材の主力は杉(スギ科)です。2017年集計で1227万立方メートルの杉素材が生産されました。
日本の固有種である杉は、私たちの営みのあらゆる場面で使われてきました。杉人工林の植林の歴史も古く、吉野林業は500年前まで遡ります。
[杉 人工乾燥を待つ杉板材半製品]
大昔の遺構から杉製材が発掘される例も多く、全国の由緒ある神社で大変な樹齢を経てきた杉巨木が御神木として祀られてきました。
縄文杉で有名な屋久島の天然杉は、戦前・戦後の乱伐に対する反省から保護対象となっていますが、学術調査で、今も樹齢1000年を超える高樹齢木が発見されています。
神代杉という言葉があります。大昔の火山爆発で、長い間、朽ち果てず地中に埋もれた杉を指しますが、鳥海山の噴火に伴う土埋木が有名で、2500年前の杉が製品化された例もあります。
優良な杉資源を持つ地域は、ブランド産地として発展してきました。秋田杉、日光杉、山武杉、北山杉、吉野杉、春日杉、霧島杉、尾鷲杉、天竜杉、智頭杉、魚梁瀬杉、屋久杉などがよく知られています。近年も、地域の製材産地がブランド化を目指し、産地の名前を付けた杉を売り出しています。
[杉 杉の高樹齢大径木丸太]
杉の用途は実に幅広く、構造材、造作材、建具材として使われてきたほか、酒樽、桶、各種生活雑貨、民芸品、彫刻材としても使われてきました。秋田杉の天井板、北山杉の磨き丸太や床柱、日光杉の大黒柱、酒樽(樽丸)の吉野杉などは、産地の木材産業発展の原動力となっていきました。
現在も、合板、集成材、LVL原材料の原材料として杉は中心的な役割を果たしています。また、建築技術の進化を背景に、CLTやBP材のような杉を原材料とした新たな構造材も開発されています。圧縮加工することで、杉の弱点である柔らかさをカバーする製品も登場しています。
杉人工林資源はこれからの日本の最も重要な資産でもあります。国民全体の資産であると考えます。この資産を積極的に活用すること、すなわち杉人工林を健全な形で循環させ、林家が意欲をもって森林経営できるようにすることが、私たちの役目でもあります。