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バルセロナ
地中海に面したフランスの東端、ニースから車で左に地中海を見ながら西へ、西へ。
前回はサン・ギレム・ル・デゼール修道院のあるギレムまでたどり着いた。
その先をちょっと行くと、いつの間にかスペインとの国境近くまで来ていた。
じゃー、ここまで来たんだから、ついでにバルセロナもちょっと見ようじゃないかと、スペインに寄り道することになった。
ヨーロッパは国境の検問がほとんどないから、また車での旅行だから、気ままにコースを選択することができる。
バルセロナと言えばガウディ。
この写真は旅した30年前のサクラダ・ファミリアで、まだ全貌を見るには程遠い状態だった。その後の建設のスピードは凄まじい。
同行者はガウディが好きだという人、ちょっとね、という人、様々。
この旅は30年以上前の1993年だったが、まだサクラダ・ファミリアの工事はそんなに進んでいなかった。
あの時からの約30年の間に、ものすごい勢いでサクラダ・ファミリアの工事は進んだ。
完成予定が2026年と言われていたが、コロナ禍で延期になるのではと思っていたが、でもやはり完成は再来年の2026年!とのこと。
もっとも細部はまだやり残した工事があるらしく、その後も続くとか。
サクラダ・ファミリアを知ったのは大学生の頃。
研究室にあった写真集で見て、そのデザインの迫力に頭がくらーっとなったことを覚えている。
その写真集は1960年代のもので、この旅行で見た時より、もっと工事は進んでいなく、ほんの一部を除き、地上に近いところで工事が行われていた。それでも、その頃のサクラダ・ファミリアには人を根源から揺さぶる力があった。
また、完成まであと何世紀かかるか分らないと言われていた。
それがこのところ急ピッチで工事が進んだのは、観光客による(建設費に使われる)拝観料収入の増大、3D構造解析、3Dプリンターによるモデリングが可能になったこと、超高強度コンクリートなどの先端技術の導入によると言われている。
世紀の、というより人類のなしえた偉業の一つに違いなく、早く完成を見たいものだが、ここまで来てしまうともうそんなに急がなくても、という気がしないでもない。
技術の進歩が美しいものを可能にするとは言えない。
むしろ逆な場合が多い。
ガウディ―が生存していた時に作られた「生誕の門」の部分は素晴らしいが、何やら最近作った部分は段々と緻密さに欠けているようだ。
ガウディが生存時に、神は完成をお急ぎにならない、と言ったとか。
ガウディ―が存命中に作った部分
バルセロナで感銘を受けたのはサクラダ・ファミリアもあったが、もう一つ、古い建物のリノベーションがうまい!と感心したこと。
この旅行から30年たち、いまや日本もリノベ流行り。
石造は寿命が長いからヨーロッパではリノベして使い続けることはわかっていたが、それは単に傷んだところを修繕して使い続けるのでなく、既存をリソースとして扱い、以前よりさらに良くなるようにしていることだ。
創作とも言っていいくらいの関わり方を建築家はしている。
バルセロナのリノベ1
バルセロナのリノベ1 華奢なアーチの付いた柱と周囲のどっしりした壁の対比がうまい。
バルセロナのリノベ2 窓に仕込まれた煉瓦の壁と窓
バルセロナのリノベ3 古い建物にガラスのボックス
ここでまた本の紹介。
最近日本でもリノベが増えてきた。
2023年時点で6502万戸のストックのうち、なんとその13.8%の900万戸が空き屋といったことで、もう新築をするより、空き家をどう利用するかの方にシフトしつつある。
当然、建築家も新築の仕事がなくなり、リノベに走らざるを得なくなっている。
そのような状況はあるが、スペインのリノベを見ていると、既存の建築をスタート地点と考えることで、さらにより豊かな建築を作れる可能性があることを教えてくれた。
そこで、またそんなことを書いた良い本の紹介です。
時がつくる建築: リノべーションの西洋建築史
リノベーションからみる西洋建築史
歴史家がリノベについて書くとどういうことになるか、まずはそこに興味があったが、歴史家が書くとよりリノベの意義が見えてくる。
建築家のこれからの仕事を位置づけてくれる。