東京15号地、予想外の輸入木材製品在庫積み増し

今も新聞、雑誌、TVなどで木材製品調達が困難なこと、価格も倍以上になっているといった話が取り上げられびっくりすることがあります。輸入製品は大方の見込みを見事に裏切る大量かつ集中入荷となり、各地の港頭在庫を満杯にさせ、国産材大型製材工場は受注減で工場内在庫が増え始め、商品回転を優先する販売に軸足を移さざるを得なくなっています。
ウッドショックと称される木材価格の高騰は終焉しました。ただ、この間、明らかになったことは工務店側の「必要な数量をいつでも買うことができる」という決め付けがもろくも崩れ去ったことではないでしょうか。

輸入製品市況や需給を見るうえで最も重要な指標は港頭在庫動向です。首都圏に供給される輸入木材製品の多くは東京港に荷揚げされ、流通事業者の手でプレカット工場など各地の需要家に出荷されます。その入荷拠点となるのが東京15号地で、コンテナ船で輸入された製品も多くが15号地に集結し保管されます。世界有数の木材製品受け入れ地といえます。この東京15号地で歴史的な在庫数量積み増しが起きています。

22年8月末在庫はついに20万㎥を突破、前月末比6.7%増の20万9442㎥になりました。特にロシア・中国ほかの在庫は今年最高の9万3809㎥まで増加しています。15号地の適正在庫水準は12万㎥といわれ、輸入木材製品価格急騰が始まった21年前半は当該在庫が7万㎥まで減り込み価格高騰に火をつけましたが、21年後半から在庫積み増しが顕著となり、22年8月末には21年1月比で2.9倍となっています。

今回の在庫増では大手輸入元だけでなく、普段直輸入など行わない流通事業者もスポットで輸入参戦し、取引履歴がなくても先払い現金を打てば誰にでも売ってくれる中国などは千載一遇の商機到来とばかりに日本への売り込みを図りました。中国産合板、LVLは港頭だけでなく流通事業者倉庫にもうず高く積まれています。

新型コロナ禍に伴い世界的に木材製品供給が不安定になったことに加え、ロシアによるウクライナ侵攻とロシアへの経済制裁が重なり、先行き品不足が起きるであろうと予想して多くの木材流通事業者が買いを増やした結果でもあるわけですが、大方の関係者がそのように動いたことで記録的な大量入荷となったわけです。

22年1~7月時点の主要輸入製品の全国入荷量は欧州産製材が160万㎥(前年同期比32%増)、欧州産集成材が51万㎥(同20%増)、ロシア産製材が56万㎥(同32%増)、合板が123万㎥(同16%増)。カナダ産製材のみが同18%減の60万㎥にとどまりました。

問題はこれらの入荷玉の輸入コストが大幅に上昇している点です。輸入製材の22年7月平均単価(㎥当たり、財務省貿易統計データから算出)は8万3205円(前年同月比43%増)、このうちカナダ産11万4711円(同40%増)、欧州産7万5798円(同77%増)、ロシア産7万2466円(同44%増)。また、欧州産集成材は12万2826円(同129%増)。現在入荷している木材製品のおそらく大半の輸入コストが最高値となっています。
このため、需給が緩和したからといって価格を引き下げる余地はほとんどない。ドル建てやユーロ建ての主要産地日本向け価格は最高値から徐々に下がりつつありますが、一方で急激な円安ドル高進行があり、今も新規輸入材コストは最高値に張り付いたままです。

大量入荷だけでなく出荷の落ち込みでも在庫積み増しとなります。輸入コストが高値に張り付き価格弾力性を失い市場の買い気を鈍らせた港頭出荷が減少した結果の在庫増です。流通関係者は需給緩和に伴う地合いの軟化は重々理解していますが、かといって売り急ぐことができないのが今の状況でしょう。
それでも在庫損が出ないうちに在庫を軽くする必要があるため、じりじりと値を下げ始めています。いつまで踏ん張りがきくかは今後の対日輸出価格と為替動向次第でしょう。1㌦140円を超える強烈な円安到来で期近に新規輸入コストが大幅に下がることは考えにくいですが、一方で高値在庫を長期間持ち続けることができるとも思えません。まさかの円高に反転したら終わりです。

東京15号地の上屋保管料は1カ月(3期)で㎥1000円弱かかります。首都圏の他港荷役会社と比べ割安ですが、例えば1000㎥の在庫を1カ月間保管した場合100万円の保管料がかかります。在庫期間が延びるほど保管料負担は増していきます。これは荷主にとり大きな負担です。現在在庫されている製品の入荷日を見ると2~3カ月前はざらで、昨年秋以降に入荷したものもあり、その保管料負担で予定収益など吹っ飛んでしまいます。
そのため輸入元は少しでも保管料が割安な関東圏の物流事業会社倉庫に在庫を移管させるケースが相次いでいます。関東圏で最大級といわれる物流会社倉庫を視察しましたが、ここも輸入木材製品在庫で満杯になっていました。こうした在庫増問題は首都圏に限ったことではなく、全国の港湾で起きています。

輸入製品在庫の急増で日本側は新規輸入が極めて困難になっており、今後の輸入量は激減してくるでしょう。さすがに入荷減を見越して逆張りできる輸入元は少ないと思います。既に欧州産製材の第3四半期契約は通常の50%以下になったといわれ、間もなく開始される第4四半期交渉も低調な成約にとどまりそうです。欧州産製材だけでなく、ロシア産、カナダ産、各種集成材・合板・LVLなども新規の買い付けは極めて低調です。入荷しても置き場がない状況が改善できなければ当然かもしれません。

日本側の買い気が後退したことで海外主産地の対日輸出価格も反転局面に入っています。欧州産ホワイトウッドKD間柱(芯去り)は500ユーロ(C&F、㎥)前後に下がっており、中国産の全層カラマツ構造用合板(12㍉厚3×6判、JAS、F☆☆☆☆)は今年の最高値から25%幅でドル建て対日輸出価格を引き下げてきたようです。羽柄材向けとなる中国産ポプラLVLも同様にドル建て輸出価格が大幅に下降しています。大量の高コスト手持ち在庫を抱えた流通事業者にとって怖いのは在庫損を確定しかねない産地のこうした動きでしょう。

こうした木材製品市況の乱高下に工務店はどう対処すべきか、いまさら在庫を持つことはできません。とはいえ、急変動する木材製品市況に機動力のある対応をするためには正しい情報を取得していく必要があると思います。

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