太陽光発電設備の設置義務化は先送りに

吸収源対策としての木材の利用拡大を明記

【住宅のZEHとLCCMについて】

【住宅のZEHとLCCMについて】

国土交通省は、「2050年カーボンニュートラル」実現の一環として、最終エネルギー消費の約30%を占める民生部門(業務・家庭部門)の代表格である住宅・建築物における一層の省エネルギー化や脱炭素化に向けた取り組みの強化を図るため、21年4月から6回にわたり、経済産業省、環境省と連携し、有識者や実務者等で構成される「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」を開催しました。

8月に公表された同検討会の取りまとめは、2030年までの中期目標を軸に、2050年までの長期展望も含めた内容となっており、具体的なロードマップも示されました。今回のとりまとめは今後の国の建築物に対する省エネ施策の基本となるもので、国の住宅をはじめとする建築物の省エネに向けた取り組みは今後、さらに強化され、並行して取り組み促進のための公的事業も増えてくると考えられます。

当初の方針では、住宅やビル等への太陽光発電設備の設置義務化案も出て、一部報道もありましたが、同検討会では一律の義務化は無理があるとの意見があり、当面の義務化は見送られました。一方、新たに建設される学校、文化施設、庁舎などの公共建築物では、太陽光発電設備の設置を標準化すると明記されました。

東京都では2021年9月28日、都議会での所信表明演説で、小池百合子都知事が「都内で新築する住宅」(一戸建て、マンション、集合住宅)を対象とした太陽光発電設備設置義務化を検討する方針を打ち出しており、今後、自治体間で取り組みに差が出るかもしれません。

同検討会では、太陽光発電設備の設置について、設置義務化に対する課題の指摘もありましたが、導入拡大の必要性については共通認識としており、将来において太陽光発電設備の設置義務化も選択肢の一つとして、あらゆる手段を検討し、その設置促進のための取り組みを進めるとあります。

既存の建築物に対しても太陽光発電設備の設置促進を求めています。環境省推計によると、公共建築物で導入可能な太陽光発電の設備容量は最大で約1900万㌔ワット、これは国内で既に導入された太陽光発電設備の3割に相当するとのことです。

グラスゴー(英国)でCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が開催されました。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)特別報告書における「将来の地球の平均気温上昇が1.5℃を大きく超えないようにする」ためには、2050年前後には世界の二酸化炭素排出量が正味ゼロになっていることが必要との見解を踏まえ、各国が方針を表明しました。国連は「無軌道な気候変動をコントロールするため、世界にとってベストで最後のチャンス」と訴えています。

日本に限らず世界各地で気候変動を原因とする災害が多発しています。次の世代を担う若い人たちにとっては切実な問題であり、現役世代はこの問題を次の世代に先送りすることがあってはいけません。国家間のエゴを乗り越えた取り組みが急務だと思います。COP26も、半歩前進とはいえ、最終的には後退感が否めない宣言という残念な結果になってしまいました。

さて、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みですが、「家庭・業務部門」、「エネルギー転換部門」、「吸収源対策(木材の利用拡大)」の3つに分かれています。

前記した太陽光発電設置義務化については当面、見送りとなりましたが、将来における設置義務化も選択肢の一つとして、あらゆる手段を検討し、その設置促進のための取り組みを進めるとしました。また、国や地方自治体については、率先した取り組み(新築における標準化等)を求めています。
ロードマップでは2030年度までに、新築される住宅・建築物についてZEH、ZEB基準の省エネ性能が確保されているとともに、新築戸建て住宅の6割で太陽光発電設備が導入されていることを目指しています。

家庭・業務部門では、2025年度の住宅を含む省エネ基準への適合義務化を柱に、義務化が先行している大規模建築物から省エネ基準を段階的に引き上げ、遅くとも2030年までに、誘導基準への適合率が8割を超えた時点で義務化された省エネ基準をZEH、ZEB基準の省エネ性能に引き上げるとあります。
また、省エネ性能表示の取り組みとして、新築住宅・建築物の販売・賃貸の広告等における省エネ性能表示の義務付け、既存ストックは表示・情報提供方法を検討・試行していきます。

吸収源対策(木材の利用拡大)では、木造建築物に関する建築基準のさらなる合理化、公共建築物における率先した木造化・木質化の取り組み、民間の非住宅建築物や中高層住宅における木造化の推進、木材の安定的な確保の実現に向けた体制整備の推進に対する支援、地域材活用の炭素削減効果を評価可能なLCCM住宅・建築物の普及拡大を掲げています。

脱炭素社会の実現において、木材活用が重要であると明記され、具体的な取り組みとして示されたことは画期的といえます。住宅、各種建築物で木材を積極的に活用するという考え方は先進各国に共通しており、EUも先ごろ、2030年欧州新林業戦略が打ち出されたところです。日本においても建築物の木造・木質化を促進することは炭素貯蔵で重要な役割を果たすとの明確な共通認識があり、積極的な施策を展開しているところです。

ただ、過度の木材利用が森林枯渇につながることは避けなければなりません。よく、日本の森林は少子高齢化していると指摘されます。つまり、現在は戦後植林された人工林の多くが伐期に来ていることから、ふんだんに木材が供給されますが、伐採後の新規植林面積が極めて少なく、次の50年を考えた時、国産材資源は不安が大きいという問題です。
植林再造林事業も投資ですから、確固とした収益見通しが立たなければ将来に向けた投資は困難です。日本の人工林が本当に循環資源として確立できるかどうかは、これからの5年、10年にかかっているといっても過言ではありません。

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