このほど、木材利用推進中央協議会(鈴木和雄会長=全国木材組合連合会会長)が主催する今年度の受賞施設が発表されました。今年度も優秀な建築物が多数表彰されました。建築・設計関係者の間でも、同賞の受賞は大きな励みとなるようです。この取り組みがさらに盛り上がってくることを期待したいところです。
同協議会は昭和59年発足以来、各都道府県に設立された地方協議会とともに、木材の利用推進・需要拡大のための活動に取り組んでおり、平成5年度から農林水産省が後援し、木材の利用推進等に寄与すると認められた優良な施設に対して、内閣総理大臣賞、農林水産大臣賞、国土交通大臣賞、環境大臣賞、林野庁長官賞及び木材利用推進中央協議会会長賞等の表彰を実施しています。今年度は日本建築士会連合会の三井所清典名誉会長を審査委員長に、受賞施設が審査されました。
国産材の活用に向けて、特に非住宅木造・木質化施設の建設が増加しています。これは国を挙げて住宅以外の建築分野で木材を積極的に使っていこうという決意のあらわれであると思います。近年では木造・木質化受賞建築物も多様化しており、意匠、構造両面から木材の可能性、素晴らしさを引き出す建築が多く目につきます。
戦後植林された針葉樹人工林を適切な形で活用し、付加価値を高めていくことで山に収益を還元することができ、森林資源を健全で循環可能なものとすることができます。こうした木造・木質化建築物は木材部材内部に炭素を長期貯蔵し、大気中への二酸化炭素排出を抑制する機能があります。国は脱炭素社会実現に向け現在、多くの取り組みを進めていますが、国産材を主体とした木材の活用はそうした社会の実現において極めて重要です。
内閣総理大臣賞を受賞した「あわくら会館」(岡山県英田郡西粟倉村)は、施主が西粟倉村、設計がアルセッド建築研究所、施工が梶岡建設です。主要構造は木造軸組と鉄筋コンクリート地上2階建て(延べ3461平方㍍)。主な使用樹種 スギ、ヒノキ、クリ、カシだそうです。
内外装の大部分に同村産のスギとヒノキが使われています。
また、木部の仕上げには、当社御取引先であるイケダコーポレーション様が輸入販売する「リボス自然健康塗料」(タヤ、クノス白木、カルデット)が採用され、壁面はリボスの「オガファーザー」と「デュブロン」のオーガニックフィニッシュ仕上げが採用されました。
イケダコーポレーション様は「リボス自然健康塗料は天然のアマニ油を原料とし、木の呼吸を妨げず、人と環境に優しい世界最高レベルの安全性を保つ自然塗料です。オガファーザーは木と再生紙からなり、透湿性があり木材に最適な壁紙で日本でも木造建築への採用が増えています」と述べています。
「あわくら会館」は、森林経営、素材生産、木材流通や木製品・木製家具デザインなど、地域の川上から川下までの事業者が協働することにより建てられた木造庁舎及び多目的交流施設で、工期の分割や木材供給スケジュールに合わせた工程の設定等の工夫により、建物に使用する木材の村産材率97%を実現。健全な森林経営の推進を目指す「百年の森林構想」に基づく計画的な設計プロセスと美しいデザインを実現しているとのことです。
受賞施設及び受賞者は次の通りです。
◇内閣総理大臣賞=あわくら会館(岡山県)◇農林水産大臣賞=髙惣(たかそう)木工ビル(宮城県)◇国土交通大臣賞=タクマビル新館(研修センター)(兵庫県)◇環境大臣賞=流山市立おおぐろの森小学校(千葉県)◇林野庁長官賞=木曽町役場本庁舎(長野県)、桐朋学園宗次(むねつぐ)ホール(東京都)、南会津地方広域市町村圏組合・新消防庁舎(福島県)◇木材利用推進中央協議会会長賞=滋賀県林業会館(滋賀県)、道の駅したら・設楽町奥三河郷土館(愛知県)、アネシス茶屋ヶ坂(愛知県)、高輪ゲートウェイ駅(東京都)◇審査委員会特別賞=南予森林組合新事務所(愛媛県)、KAKAMIGAHARA PARK BRIDGE (岐阜県)。優秀賞50点を含めた受賞施設の詳細は下記をご覧ください。
20211026182535commendation_2220211021.pdf (jcatu.jp)