CLTの新ロードマップが策定されました

【CLT製造工場】

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CLTの新ロードマップが策定されました

内閣官房の「CLT活用促進に関する関係省庁連絡会議」(議長=岡田直樹内閣官房副長官)は21年3月25日、「CLTの普及に向けた新ロードマップ~更なる利用拡大に向けて~」を取りまとめました。今回で3回目のロードマップ策定となります。中大規模木造建築ポータルサイトでも4月19日に公表されています。  https://mokuzouportal.jp/

同連絡会議は平成28年6月に設置されました。林業及び木材産業の成長産業化を推進し、地方の持続的な産業の育成と雇用の確保を図り、地方創生を実現することを目的に、CLT(直交集成板)の公共建築物、商業施設等への幅広く積極的な活用に向けて、関係省庁の緊密な連携を確保し、実効ある方策を検討する活動を進めています。

今回の新ロードマップは平成28年に策定した5年間のロードマップを踏まえ、令和3年度~令和7年度の5カ年の取り組みについて策定しています。国は森林・林業・木材産業を成長戦略として位置づけ、そのなかでもCLTの需要拡大を最重点項目に掲げており、同連絡会議はCLTの需要拡大に向け関係各省庁がこぞって参画する一元窓口となっています。

今回、新たに5年間のロードマップが策定されたということで、引き続きCLT建築物に対する助成事業が継続するであろうことも類推できます。ただ、いつまでも公的助成金頼みでは産業としての将来性は危ういとも言えます。産業の自立に向けた迅速な離陸が期待されるところです。
内閣官房のCLT活用促進に関する関係省庁連絡会議(下記)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cltmadoguchi/cltkatsuyou.html
新ロードマップ(下記)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cltmadoguchi/pdf/r3_roadmap.pdf

新ロードマップでは、① CLTの認知度が低い、② コスト面の優位性が低い、③ 需要に応じたタイムリーな供給を行えていない、④ CLTの活用範囲が狭い、などが課題として出されました。これらの課題は当初から提起されているもので、徐々に改善されてきていますが、前回のロードマップでもクリアできなかった諸点です。

①CLTの認知度が低い→(目指す姿)国民にCLTの魅力やその活用の社会的意義などが広く理解される

(取組事項)CLTに関する情報の発信・CLTを用いた建築物の評価の向上→消費者・事業者等に向けたPR活動の展開(継続実施)、大規模イベント等における活用の促進(新規施策)、SDGs・ESG投資等への寄与の見える化等(新規施策)
(取組事項)モデル的なCLT建築物等の整備の促進→モデル的・先導的建築物の建築、実証事業等の促進(継続実施)、先駆性の高い建築物・製品の顕彰制度の推進(継続実施)、公共建築物等への積極的な活用(継続実施)、CLT建築物を活かした街づくりの実証(新規施策)

②コスト面の優位性が低い→(目指す姿)CLT価格が立方㍍7万~8万円となり、他工法と比べコスト面でのデメリットが解消される

(取組事項)まとまった需要の確保→公共建築物等への積極的な活用(継続実施)
(取組事項)効率的な量産体制の構築→製造施設の整備(継続実施)(令和6年度末までに年間50万立方㍍の生産体制を目指す)、CLTパネル等の寸法等の規格化に向けた連携体制の構築・規格化されたCLTパネル等の普及(新規施策)、低コストの接合方法等の開発・低コスト接合方法等の普及(新規施策)
(取組事項)建築コスト関連の情報提供→S造やRC造とのコスト比較等に関する情報の提供(新規施策)

③需要に応じたタイムリーな供給を行えていない→(目指す姿)全国どこでも、需要者からのリクエストに対して安定的に供給される体制が整備される

(取組事項)安定供給体制の構築→製造設備の整備(継続実施)、CLTメーカー間の連携による安定供給体制の構築と推進

④CLTの活用範囲が狭い→(目指す姿)幅広い範囲の建築物、構造物等でCLTの活用が進む

(取組事項)建築基準・材料規格の合理化→中層CLT建築物の構造計算等の合理化・普及(継続実施)、幅広い層構成の基準強度の設定等・告示の普及等(継続実施)、効率性の高い非等厚CLT等の規格化の拡充・規格の普及(新規施策)
(取組事項)建築以外の分野での活用→土木分野で活用可能な製品の開発推進・土木分野での活用の実証(新規施策)

このほか、CLTの設計施工等をしてくれる担い手が見つかりにくいという課題では、設計者への一元的サポートの推進、設計・積算ツールの開発、建築物の部材製造、設計、施工プロセスの一体的デジタル化の推進などに取り組むとしています。

公共建築物等への積極的な活用では、CLTの活用に関する最新の知見を国の営繕基準等へ取り入れ、関係者に広く周知、普及していくこと、ZEB・ZEHの補助事業においてCLTを活用した案件を対象に、優先採択または別途補助を実施することが明記されています。
設計に関しては、ルート2の構造計算の合理化・普及により、CLTパネル工法の構造設計にかかる負荷を軽減することが打ち出されています。このほか、新たなCLT需要の創出として、土木分野で活用可能な製品の開発推進が新規に提起されました。
*ZEB(net Zero Energy Building)、ZEH(net Zero Energy House)=建築物における一次エネルギー消費量を、建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用等により削減し、年間での一次エネルギー消費量が正味でゼロまたは概ねゼロとなる建築物を指します。
 
現在、国内にJAS認定のCLT製造工場は8工場ありますが、合計生産能力はまだ年間10万立方㍍に届いていません。第2回ロードマップでも策定された年間50万㎥には程遠い現状です。設備投資額が大きいこと、CLT需要の将来性がいまだ不透明なことなどから、新規参入が難しい状況です。
一方、CLTだからこそできることもあります。特に中高層建築分野ではS造やRC造に替わる建築構造材としての可能性を秘めており、また巨大な炭素貯蔵庫として、都市に第二の森を実現する木造建築をけん引する存在になることも期待されています。
当社では非住宅木造建築に関するご相談にも対応しています。お問い合わせをお持ち申し上げます。

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