「2050年までにカーボンニュートラル」?
昨年の10月国会で管総理が「2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロにする」と所信を表明しました。
地下から石炭・石油・天然ガスなどを取り出して、世界中の資源が便利に輸送され、プラントで均質な資材造成され、それが加工されて効率的に組み合わせられて製造された消費財が、消費地に運ばれて、使いやすくて便利な商品がコンビニにいけば安く買える、素晴らしい社会。その代償が、化石資源由来の二酸化炭素など温室効果ガスが大気中に放出され、その結果生した気候変動問題です。
2050年までに二酸化炭素を排出しない社会をつくります!!
どうやって?
――――
循環しなくなった現代社会
その前に、気候変動の裏側にいる空気中の二酸化炭素というのが、どうなっているのか、3枚の図で見てみましょう。
図1をご覧下さい
図1 南極の氷柱におけるCO2 濃度と今後100年間における大気中の CO2 濃度の予測
Prof Berrien Moore III “Challenges of a Changing Earth”(2001)
小野有五、「科学」71,9月号、(2001)「アムステルダム宣言と地球環境科学の新時代」
図1は、南極のボストーク基地(ロシア(旧ソ連時代から))で南極の氷床をボーリングし3千m以上の氷柱を採取し、そこの中にあった空気のつぶからCO2の量を測定した(図2)結果です。
図2 南極ボストーク基地の氷柱分析
World Date Center-A for Paleoclimatology Educational Slide Project Polar Ice Cores
過去42万年わたって毎年の(!)二酸化炭素濃度が分かります。過去の二酸化炭素濃度は180ppmvと280ppmvの間をゆっくり変動していて、その値が気温の変動と同調しています。20世紀になってからはじめてその変動幅を離脱し急速な上昇を始めているんです。
われわれが、循環社会でない、全く別の社会を作ってそこに居住している。そのことをこの一枚の図画が見事に示していますね。何とかしなければ!!
過去に循環社会を創出した森林、そして森林と木材の役割は?
もう一枚重要な図を共有しますね。図3をご覧下さい。
ネイチェーサステイナビリティという学術誌(昨年1月号)に掲載された、「世界的な炭素貯蔵庫としてのビルディング」”Buildings as a global carbon sink”という記事に掲載された図です。
縦軸は地球上の炭素の量。真ん中の線より上は大気中の炭素。その線より下は地中と地上の炭素量です。
そして、時間軸が3つに分かれています。
一番右側が、2020年から50年まで都市のビルディングを木材で造り、排出源であった都市のインフラを炭素固定装置にしようというものです。この部分がこの記事の主たる論点ですが、この部分は次回にもう一度議論することとして、今回はいちばん左の部分、3億5千万年前からの地球の炭素の動きを見てみましょう。
図3 大地の炭素プールの形成、破壊、潜在的な再形成に関係するプロセス及び大気中のCO2濃度の変遷
3億年前では今よりずっと大気中の二酸化炭素が多かったのだそうです。それが地上に樹木が生まれ、光合成をして炭素を体内に取り入れることによって地上に固定し、腐敗するという条件がまだなかったので、堆積して地下資源になったのだそうです。
大気中の二酸化炭素量がいまのような形になる中で、大切な役割をはたしたのが、森林なんですね。炭素プール形成期の主役は森林でした。
それで、現在のような大気中の二酸化炭素問題を議論する場面の中心に、森林の炭素の吸収や、その固定形態の木材の問題が、重要な役割をはたす根拠があるんだ(炭素プール再形成期の主役はやはり森林(?))、ということを左側の部分が示しています。
地球環境問題は奥の深い問題ですが・・・・
地球環境問題といえば、人が森林を開発して野生生物に近づいて、感染症が広がりパンデミックだ!とか、いろいろなテーマがあるんでしょうが、上記のとおり、気候変動問題をとりあげ、次回から木材と気候変動問題を議論して参ります。