木質バイオマス発電はカーボンニュートラルかで論議

【数値はやや古いですが、平成21年林野庁木材統計から。木質バイオマス利用はほとんど利用されてこなかった未利用間伐材等に新たな需要をもたらしています】

FoE Japan(Friends of the Earth International)は21年2月16日、「森林バイオマスを使った発電はカーボンニュートラル(炭素中立)ではない」とする科学者、経済学者の書簡を紹介しています。日本でも木質バイオマス発電は、国が推進する再生可能エネルギーの重要な手段として急成長していますが、書簡では国のFIT制度、各種補助金のあり方を含めた見直しを提言しています。この書簡は21年2月11日に日本政府、米国政府、欧州連合および韓国政府に送付され、科学者500人以上が賛同しているそうです。(記事のURLは下記)。
https://foejapan.wordpress.com/2021/02/16/letter-from-500-scientists/

書簡では、バイオマスの発電利用により森林が伐採され、森林に蓄えられている炭素が大気中に放出されること、森林の再生には時間がかかり、数十年から数百年にわたって気候変動を悪化させること、バイオマスの発電利用は化石燃料を使用した場合の2~3倍の炭素を放出する可能性があることを指摘しています。また、各国政府は「気候変動対策」として、バイオマスを燃焼することに対する補助金やインセンティブを実施していますが、それは気候変動問題を悪化させるものであり、真の炭素排出削減のためには、森林を燃やすのではなく、保全と再生に努めるべきことが重要と述べています。

日本では、2012年にFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)が開始されて以降、国内のバイオマス発電事業が急増しています。提言では、日本のFIT制度について「木材を燃やす発電所への補助金をやめる必要がある」と言及しています。書簡の概要を紹介します。

◇                  ◇

2050年までにカーボンニュートラルを達成するために、森林の保全と再生こそが、この目標を達成するための重要な手段であり、地球規模の生物多様性の危機への対処にも役立つものです。エネルギー生産のための燃料を化石燃料から木質燃料に転換することにより、気候目標と世界の生物多様性の双方がそこなわれることがないよう強く求めます。

何十年もの間、紙や木材製品の生産者は、各工程で発生する木質廃棄物を副製品として電気や熱を生成してきました。この利用は木材の新たな伐採につながるものではありません。しかし近年では、バイオマスエネルギーのために樹木を伐採し、木材の大部分を燃料に転用することで、森林に蓄えられるはずの炭素を放出させてしまう動きが見られます。

このような新たな用途に向けた伐採の結果、当初は炭素排出量が大幅に増加し「炭素負債」が発生します。森林を再生し化石燃料に代替することで、最終的にはこの炭素負債が解消されるかもしれません。しかし、森林再生には時間がかかり、世界が気候変動を解決するためにはその時間的猶予がありません。数多くの研究が示しているように、このような木材の燃焼は今後、数十年から数百年にわたって温暖化を悪化させることになります。その理由は基本的なことです。森林は炭素を蓄えているからです。

温暖化は、増加する森林火災、海面上昇、猛暑など、より直接的な被害を意味します。また、氷河の急速な消失と永久凍土の融解、世界の海の温度上昇と酸性化により、さらに永続的な被害がもたらされることを意味します。これらの被害は、今から数十年後に炭素を除去したとしても、元に戻ることはありません。

木材を燃やすための政府の補助金は、二重の気候変動問題を引き起こしています。なぜなら、この誤った解決策が本当の炭素排出量削減策に取って代わっているからです。化石エネルギーの使用を、真に温暖化を減少させる太陽光や風力に転換する代わりに、温暖化問題を悪化させる木材の燃焼に転換しています。

木材を燃やして電気を作るだけでなく、パーム油や大豆油を燃やす案も出ています。これらの燃料を生産するためには、パーム油や大豆の生産を拡大する必要があり、その結果、炭素密度の高い熱帯林が皆伐され、その炭素吸収量が減少し、大気中に炭素が放出されます。

もし世界のエネルギー需給量のさらに2%を木材から供給するとしたら、木材の商業伐採量を2倍にする必要があります。欧州でのバイオマスエネルギーの増加は、すでに森林の伐採量の大幅な増加につながっていることを示す十分な証拠があります。これらのアプローチは世界が目指してきた森林に関する合意を台無しにします。

このような悪影響を回避するため、各国政府は、自国産であれ他国産であれ、木材を燃焼させることに対する既存の補助金やその他のインセンティブを廃止しなければなりません。

樹木は、生きているものの方が、そうでないものより気候と生物多様性の両方にとって価値があります。将来のネット・ゼロ・エミッション目標を達成するために、森林を燃やすのではなく、森林の保全と再生に努めるべきです。
ピーター・レイヴン(ミズーリ植物協会 名誉会長、米国ミズーリ州セントルイス)

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日本政府は、「森林を構成する個々の樹木等は、光合成によって大気中の二酸化炭素の吸収・固定を行っています。森林から生産される木材をエネルギーとして燃やすと二酸化炭素を発生しますが、この二酸化炭素は、樹木の伐採後に森林が更新されれば、その成長の過程で再び樹木に吸収されることになります。このように、木材のエネルギー利用は、大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えないというカーボンニュートラルな特性を有しています。」(林野庁木質バイオマスを利用するメリット)との立場です。

木質バイオマス発電燃料は、国産材の除伐・間伐材等未利用丸太をチップ化して燃焼するものをはじめ、パーム椰子の種子などを燃料とする輸入PKS、カナダなどから輸入される木質ペレット、公園樹・街路樹選定枝、建築解体材や木質パレットなど物流で発生する木質廃材、製材工場等で発生するおが屑・端材・樹皮などを燃焼させ木材製品の人工乾燥工程に供給する熱エネルギーおよび製造工程の電力など、原材料、用途、燃焼方法は様々であり、提言でもすべての木質バイオマス発電を批判しているわけではありません。

木質バイオマス発電が本格化してから、従来、森林内に廃棄されてきた除伐・間伐材の用途が生まれ、森林から排出されることで林内がきれいになっています。これまで切り捨てられてきたものに価値が生まれ、林業家の収益に寄与しています。製材工場向けでは不要だった樹皮や枝葉も燃料とすることで価値が生まれました。こうした観点は、地球気候変動問題とは一見関係ないことかもしれませんが、森林を持続可能な資源とすることで貢献できるという見方もでき、除伐・間伐作業は森林に価値を高め、健全なものとするため必ず必要です。

書簡で提言している内容は大変重要なことだと思いますが、補助金に関する指摘を含め、バイオマス発電を否定するのではなく、燃料とする場合、注意深く伐採していくことが求められるのではと考えます。

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