木材利用促進法が民間に拡充されます

【木造・木質化された新庁舎】

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「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物における木材の利用の促進に関する法律」が2021年10月1日に施行されます。長い名称ですが、2010年10月に施行された「公共建築物等木材利用促進法」を改正し、民間建築物を含む建築物一般で木材利用の促進を目指す法律です。

このコラムでもご紹介いたしましたが、第204通常国会の衆参両院本会議において、菅義偉首相は施政方針演説を行い、20年10月の所信表明演説における2050年カーボンニュートラル宣言を踏まえ、「グリーン化社会の実現」を重要施策と位置づけました。「もはや環境対策は経済の制約ではなく、社会経済を大きく変革し、投資を促し、生産性を向上させ、産業構造の大転換と力強い成長を生み出す、その鍵となるものです。まずは、政府が環境投資で大胆な一歩を踏み出します」と述べています。
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今回の改正法は、国が目指すグリーン化社会の実現における重要なステップになるものです。これまでの公共建築物等の木造・木質化から、さらに民間建築へ踏み込み、木造・木質化建築物を拡大させることで、積極的に国産材等の木材活用を促し、気候変動問題の原因である二酸化炭素を木材内部に長期貯蔵させ、温暖化対策に資するものです。

戦後の木造建築の変遷で大きな転機となったのは、日本建築学会による住宅以外の建築での木造禁止決議からと言われています。
1959年9月の伊勢湾台風での甚大な被害を踏まえ、同年10月に開催された日本建築学会の近畿大会において、建築防災に関する決議が提起され、防火、耐風水害のための木造禁止等が決議されました。その前段として戦災を踏まえ1950年に制定された建築基準法では、最高高さ13㍍超・軒高9㍍超、延床面積3000㎡超の木造建築に対する制限措置が決定されました。
1959年の日本建築学会の決議はこの流れを踏まえたものでもあるといえ、住宅以外の建築物を木造で建築することが事実上、困難にたりました。この決議は中央官庁にも提出され、公共建築物はほぼ木造建築が取り組まれなくなりました。戦後建設された学校施設の大半が非木造となったのも、こうした方針が背景にあります。

2010年10月に施行された公共建築物等木材利用促進法はこの決議から半世紀を経て、積極的に木材を公共建築物の木造・木質化に活用していこうという法律であり、劇的な情勢変化と位置付けられています。
既に1987年、2000年の建築基準法改正で、構造や防耐火等に関し規制緩和が進み、非住宅木造建築が徐々に取り組まれるようになっていました。これと並行して2000年頃から構造用集成材をはじめとした大スパンを確保できる新しい構造部材の登場、防耐火規制緩和を背景とした新しい防耐火木質構造材の開発、大型木質構造材を加工する技術と接合金物の開発などが進展していきました。

公共建築物等の木材利用促進法が設定された当初は国が主体となって取り組まれる一方、地方公共団体の営繕部署は木造に関する知見が乏しかったこともあり、その取り組みの浸透は緩慢でしたが、地方公共団体に対し公共建築物の木造・木質化宣言(基本方針等)という形での働きかけが奏功し、実績が積み上げられていきます。特に林業県でその傾向が顕著になっています。また、森林環境税・森林環境譲与税の制定で、森林環境税の使途(森林環境譲与税)として公共建築物の木造・木質化が進み始めています。

下表は国の公共建築物木造・木質化の取り組み実績ですが、平成30年度、平成元年度は、対象となる低層公共建築物の木造化が90%を超えました(国土交通省集計)。

また、公共性が高い民間建築物を中心に、木造・木質化物件も着実に増加しています。民間については、農林水産省・林野庁、国土交通省、文部科学省、環境省など様々な省庁が独自ないし連携方式で当該木造・木質化建築に対する公的助成事業も多数打ち出しています。既に建築物の木造・木質化は国・地方公共団体に共通した政策の方向性となっています。

新たに制定された法律は、公共建築に対する木造・木質化を、広く民間に拡大させていくものです。目的に「脱炭素社会の実現に資すること」が追加されました。また、新規に3条で木材利用の促進に関する基本理念を、第6条第2項で「林業・木材産業の事業者は建築用木材等の適切かつ安定的な供給に努める」旨を規定、さらに10月8日を「木材利用促進の日」、10月を「木材利用促進月間」と制定しました。第6条第3項は昨今の木材価格高騰と供給不安を反映したものでもあると思います。

具体的な支援策はこれからですが、基本方針等を公共建築物から建築物一般に拡大し、木造建築物の設計・施工に関する先進的技術の普及の促進等、国・地方公共団体による建築物木材利用促進協定、強度に優れた建築用木材の製造技術の開発・普及の促進等、国・地方公共団体による表彰などの施策拡充が示されています。
国および地方公共団体による普及・促進に向けた具体的な公的補助事業は、こうした施策に基づいて策定される見通しで、今年度補正予算、さらに来年度予算に反映されてくると予想されます。
木材利用促進本部が農林水産省に設置され、農林水産大臣が本部長となりますが、本部には総務大臣、文部科学大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、環境大臣等が参画する省庁横断の取り組みとなります。

クボデラ㈱では皆様とともに、国産材を中心とした木材需要の拡大に向け、特に非住宅分野での木造・木質化に取り組んでいく所存です。

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