山元立木価格が大幅上昇、山林素地価格も31年ぶりに反発

【熊本県球磨郡の杉大径木】

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山元立木価格が大幅上昇、山林素地価格も31年ぶりに反発

先ごろ、一般社団法人日本不動産研究所(東京都)が毎年公表している山林素地及び山元立木価格(22年3月末現在)が公表され、山元立木価格はウッドショックと称される内外産木材価格の高騰を受け、歴史的な上昇となりました。また、山林素地価格も31年ぶりに上昇しました。これまで山林素地価格は安すぎ、この価格では山林業事業として継続して行うのは困難との声がよく聞かれました。
今回の山林素地価格も下げ止まったとはいえ、歴史的な低価格に変わりなく、この価格が抜本的に改善されない限り、国産材需要が増加しても意欲をもって事業を行っていくことが可能な山元は限られると考えられます。

山元立木価格も大幅な上昇にはなりましたが、これも歴史的に見ると依然として極めて低価格にとどまっており、山元の収益が適切に改善されたとはいいがたい水準です。国産材時代を確立していくうえで、利害関係者が応分の収益が確保できない状況は見直す必要があります。利害関係者全員がこの問題が解決に向かわない限り持続可能な森林経営の実現は程遠く、国産材供給の安定化も図れないと思います。

下表は山林素地価格の推移です。今回の調査で用材林地の10㌶あたり価格は4万1082円で前年比+0.0%、薪炭林地は同2万8553円で同0.1%増となり、31年ぶりに下げ止まりとなりました。とはいえ、用材林地は最も高値となった1983年の8万9383円と比べ46%、薪炭林地は83年の5万7382円と比べ50%であり、歴史的な低価格が続いているとみるべきでしょう。1㌶あたりの用材林地価格は4108円に過ぎません。

山林素地価格低迷要因として不動産径級所が指摘する点は、高齢化12.6%、買い手がない12.3%、林業後継者の減少12.1%、林業経営の先行き不安8.7%、木材価格の下落4.1%などとなっています。木材価格の下落という要因については立木価格が久々に上昇したことから減少していますが、高齢化は価格云々以前に深刻な問題となっています。


【山林素地価格の推移、10㌶当たり全国平均】

都道府県別に用材林地の山林素地価格をみると、北海道1万424円(10㌶あたり)、東北4万2216円、関東7万6531円、北陸4万5143円、東山(山梨・長野・岐阜)4万6718円、東海3万6327円、近畿3万2695円、中国3万3847円、四国2万3655円、九州4万2702円。北海道が飛びぬけて低い価格です。一方、埼玉県は10万2091円と突出高になっており、茨城県も8万5889円と高い居所です。

近畿、中国、四国はいずれも全国平均を下回っていますが、九州は佐賀、福岡、鹿児島の各県が5万円を超えています。なお、この集計では千葉、東京、神奈川の各都県、滋賀、大阪、奈良の各府県、香川県が集計客体数の少なさから数値公表されていませんが、奈良県の動向は興味深いです。

薪炭林地も都道府県で差が大きく、北海道は唯一8763円と1万円割れが続いています。一方、関東の埼玉県は6万1286円、茨城県は5万1000円、栃木県は5万300円と5万円超えになっています。

平均山元立木価格は杉が4994円(立方㍍)で前年(3200円)比56%高、桧が1万840円(同)で前年(7137円)比52%高、松が2729円(同)で前年(1989円)比37%高となりました。


【平均山元立木価格の推移、立方㍍あたり】

平均山元価格は1980年代後半から1990年にかけ上昇しており、それ以降はほぼ下落一方でした。1990年を前後して桧価格が高騰したことを記憶している人はもはや少なくなっていると思います。まとまった上昇幅としてはこの時以来で、杉、桧は1953年以降で最大の上昇率となりました。対象となる立木の規格は末口径20~22㌢、長さ3.65~4㍍程度の並丸太です。最寄り木材市場渡し素材価格から伐木、造材及び運搬費等の生産諸経費を差し引いた利用材積1立方㍍あたりの価格を採用しています。

しかしながら歴史的に見ていくと平均山元立木価格の最高値は1980年で、杉は2万2707円、桧は4万2947円、この最高値と比べ杉は22%、桧は25%にとどまっています。ですから大幅高になったとはいえ、まだまだ低価格に終始しており、特に杉の安値は山元にとって厳しいものがあると思います。

都道府県別に平均山元立木価格をみると、杉は東北4669円(立方㍍、前年比58%高)、関東4439円(同36%高)、北陸4241円(44%高)、東山3803円(47%高)、東海4489円(53%高)、近畿4203円(61%高)、中国4642円(53%高)、四国5454円(64%高)、九州5361円(67%高)でした。一概には言えませんが、杉大型製材事業所が集中する地域で高値となっており、関東では栃木県、四国では愛媛県、九州では熊本、宮崎県が高値となっています。上昇率でも九州が顕著です。

桧は東北8320円(29%高)、関東1万168円(52%高)、北陸8994円(40%高)、東山9861円(46%高)、東海1万534円(55%高)、近畿8956円(56%高)、中国8897円(36%高)、四国1万1411円(69%高)、九州1万163円(56%高)でした。ここでも桧大型製材事業所が集中する四国、九州の高値が目立ちます。上昇率では四国が突出しています。

山元平均立木価格上昇は明らかに21~22年の木材価格高騰による影響からですが、既に内外産木材製品価格は反落局面に入っており、連れて丸太価格も高値修正となっています。果たして今回の価格上昇が一過性のものに終わってしまうのか注目されるところです。

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