子育てエコホーム支援事業が始まります
国土交通省の2024年度住宅分野超目玉事業として「子育てエコホーム支援事業」がこのほど経済対策閣議決定し24年度に実施されます。予算規模は2100億円(23年度補正予算)と大型で、今年度事業として実施された「こどもエコ住まい支援事業」(22年度補正予算1500億円、23年度当初予算209億3500万円)に続く住宅支援事業です。
今年度実施された「こどもエコ住まい支援事業」は23年9月28日で予算上限に達し終了しました。申請受付開始が23年3月31日ですから、ほぼ9カ月で予算額を消化したことになり、当初の事業申請受期限12月末を大幅に前倒して事業が終了しました。多くの新設住宅・リフォームで同事業が活用されたとみられます。
「子育てエコホーム支援事業」は「こどもエコ住まい支援事業」を300億円近く上回る事業規模です。おそらく「子育てエコホーム支援事業」も活発な活用が予想され、早めの対応が肝要であると考えます。
同事業は国土交通省の「子育てエコホーム支援事業」に加え、環境省の「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業」(23年度補正予算額1350億円)、経済産業省の「高効率給湯器の導入を促進する家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金」(同580億円)及び「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業」(同185億円)との3省連携で行われるもので、国はワンストップ対応を目指しています。この関係の3省事業合計は4200億円にのぼります。
子育てエコホーム支援事業とは
同事業の目的は、エネルギー価格などの物価高騰の影響を受けやすい子育て世帯・若者夫婦世帯による高い省エネ性能を有する新築住宅の取得や、住宅の省エネ改修等に対して支援することにより、子育て世帯・若者夫婦世帯等による省エネ投資の下支えを行い、2050年カーボンニュートラルの実現を図ることを目的とします。上表は「住宅の省エネリフォームへの支援強化」に関する事業概要です。
補助対象事業は、①子育て世帯または若者夫婦世帯が取得する長期優良住宅またはZEH住宅についての注文住宅の新築や新築分譲住宅の購入、②世帯を問わず対象工事を実施するリフォームです。
事業申請は注文住宅の新築工事、新築分譲住宅の販売、または住宅のリフォーム工事を行う事業者が行います。工事発注者や住宅購買者となる一般消費者は申請者にはなれません。子育て世帯、若者夫婦世帯については具体的な規定があります。
同一の人が複数申請することは基本的にできません。また、この事業と重複する国の他の補助制度との併用も原則としてできません。
補助事業のタイプと補助対象期間
注文住宅の新築は、住宅取得者となる子育て世帯または若者夫婦世帯が、自ら居住することを目的に新たに発注(工事請負契約)する住宅の建築を指します。工事請負契約がない工事はこの補助事業の対象外となります。
23年11月2日以降に基礎工事より後の工程の工事に着手したものが対象となります。着手可能な工事例は、杭、基礎、地下室、基礎断熱、足場板等の仮設、給排水、電気、土台敷、外構などで、地上階の柱、壁、屋根といった工事を11月1日以前の着手済みの場合は対象外となります。これは新築分譲住宅の購入でも同様となります。
新築分譲住宅の購入は、住宅取得者となる子育て世帯または若者夫婦世帯が、自ら居住することを目的に購入(売買契約)する新築住宅の購入を指します。宅地建物取引業免許を有する事業者からの購入に限ります。また、完成から1年以内であること、人の居住の供したことのないものが対象となります。
23年11月2日以降に基礎工事より後の工程の工事に着手するものを対象とします。工事の具体例は上記。
リフォームは、住宅取得者等が工事施工業者に工事を発注(工事請負契約)するリフォーム工事で、工事請負契約がないものはこの補助事業の対象外となります。
23年11月2日以降に工事に着手するものを対象とします。
注文住宅の新築で補助事業対象となる新築住宅の性能は、長期優良住宅、ZEH住宅のいずれかとなります。また、住宅の延床面積は50平方㍍以上240平方㍍以下となります。このほか土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律、都市再生特別措置法の規定に該当する必要があります。
新築分譲住宅の購入も上記要件を満たすものが対象となります。申請する際には長期優良住宅、ZEH住宅に該当することを登録住宅性能評価機関等の第三者機関による証明書等が必要となります。
リフォーム工事で対象となるのは、①開口部の断熱改修、②外壁、屋根、天井または床の断熱改修、③エコ住宅設備の設置、④子育て対応改修、⑤防災向上改修、⑥バリアフリー改修、⑦空気清浄機能、換気機能付きエアコン設置、⑧リフォーム瑕疵保険等への加入。このうち①、②、③のいずれかに該当するリフォーム工事を含んでいる必要があります。
原則として1申請あたりの合計補助金額が5万円未満の場合は申請できません。
③のエコ住宅設備は、太陽熱利用祖ステム、節水型トイレ、高断熱浴槽、高効率給湯器、節湯水栓、蓄電池の6品目となります。
注文住宅の新築、新築分譲住宅の購入の補助額
長期優良住宅は1戸当たり100万円。ただし、市街化調整区域、土砂災害警戒区域または浸水想定区域は同80万円。
ZEH住宅は1戸当たり80万円。ただし、市街化調整区域、土砂災害警戒区域または浸水想定区域は同40万円。
リフォーム工事の補助額
リフォーム工事は対象となるものが8つあり、ここでは主に①、②、③を見ていきます。
①開口部の断熱改修
②外壁、屋根、天井または床の断熱改修 ③エコ住宅設備の設置
④子育て対応改修
家事負担の軽減に資する設備の設置:ビルトイン食器洗機(補助額1戸当たり2万1000円)、掃除しやすいレンジフード(同1万3000円)、ビルトイン自動調理対応コンロ(同1万4000円)、浴室乾燥機(同2万3000円)、宅配ボックス1万1000円(住戸専用の場合)、共用の場合は1ボックスあたり1万1000円。
防犯性の向上に資する開口部の改修:外窓交換2万2000円、2万6000円、3万7000円(1カ所当たり、面積で異なる)、ドア交換3万8000円、5万4000円(大きさで異なる)。
生活騒音への配慮に資する開口部の改修:ガラス交換3000円、8000円、1万1000円(1枚当たり、大きさで異なる)、内窓設置・外窓交換1万7000円、2万円、2万5000円(1カ所あたり、大きさで異なる)、ドア交換3万2000円、3万7000円(1カ所当たり、大きさで異なる)。
キッチンセットの交換に伴う対面化改修:改修個所数によらず1戸当たり9万円。
⑤防災性向上改修
ガラス交換7000円、1万2000円、1万7000円(1枚当たり、大きさで異なる)、外窓交換1万6000円、2万7000円、4万1000円(1カ所当たり、大きさで異なる)。
⑥バリアフリー改修
手すりの設置5000円(1戸当たり)、段差解消7000円(同)、廊下幅等の拡張2万8000円(同)、衝撃緩和畳の設置2万円(同)。
⑦空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置
エアコンの冷房能力3.6kW以上2万6000円(1台あたり)、同2.2kW~3.6kW2万3000円(同)、2.2kW以下1万9000円(同)。
⑧リフォーム瑕疵保険への加入
対象となるリフォーム瑕疵保険または大規模修繕工事瑕疵保険への加入に対して1契約当たり7000円。
事業申請から補助金の還元まで
同事業では、新築住宅の建築業者または販売業者及びリフォーム工事の工事業者が新築住宅の建築主または購入者の委託を受けて補助事業者となり、補助金の申請及び交付を受けますが、交付された補助金は住宅取得者等に還元される必要があり、申請にあたっては還元方法について、あらかじめ両社で同意する必要があります。
住宅事業者は同事業の参加にあたっては、所定の手続きにより「補助事業者」としての登録を受ける必要があり、事業者登録後に交付申請する建築工事またはリフォーム工事を補助の対象とします。
申請の全体的な流れは下表の通りです。
申請期限は下表の通りです。新築とリフォームで異なります。
同事業に参加する場合、最初に事業者登録を行う必要があります。事業者登録の開始は24年1月中旬から遅くても24年12月末(予定)まで。登録は事業者単位で複数登録はできません。登録時に必要な主な事項は、事業者情報(法人の場合は法人名称、法人番号、法人登記の登記事項証明書、法人の印鑑)、事業内容(実施予定の補助事業の内容、受注可能エリア、事業免許(注文住宅の新築は建設業許可、分譲住宅の新築は宅地建物取引業免許、リフォームは建設業許可・住宅リフォーム事業者団体登録)。
交付申請は一定以上の工事の出来高が確認できる時点とし、注文住宅の新築と新築分譲住宅の購入は補助額以上の工事の完了後、リフォーム工事はすべての工事の完了後となります。
交付申請期間は24年3月下旬から12月末まで。任意で交付申請の予約が可能です。前記しましたが、活発な応募が予想され、締め切り前に予算上限に達する可能性があり、早めの申請が重要です。
完了報告は住宅の引き渡しと入居を行った後、提出します。戸建住宅は25年7月31日まで、共同住宅等で階数10以下は26年4月30日まで、共同住宅等で階数11以上は27年2月28日まで。
補助金交付を受けた補助事業者は補助金を住宅取得者に対して全額還元する必要があります。還元方法は共同事業実施規約にて交付申請時に合意されている者に基づいて方法で行う必要があります。
事業者登録、交付申請、完了報告で必要な提出書類がそれぞれ明記されています。同事業の詳細は下記URLを参照してください。
001710820.pdf (mlit.go.jp)