増加する工務店の国産材利用~全建総連アンケートから~

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増加する工務店の国産材利用~全建総連アンケートから~

全国建設労働組合連合会(全建総連)はこのほど、「工務店の国産材利用実態調査アンケート」を公表しました。2021年から始まった内外産木材製品価格の高騰と入手難で最も影響を受けたのは地場工務店だと思います。これまで大半の木材製品や建材・住設はいつでも手に入ったことから、工務店がまとまった数量を在庫する必要はなかった訳ですが、今回、木材製品入手難による施工の大幅な遅れ、価格急騰に伴う収益への圧迫など多くの問題が噴出しました。

木材製品を在庫するとなると、かなりのスペースが必要になります。かつては林場や加工場などまとまった用地があり、そこで木材製品も在庫されました。以前は製材工場から供給される木材製品の大半が未乾燥材であったため、これを養生・天然乾燥する場としても重要でした。
しかし、構造材の大半がKD・集成材となり、プレカット工場が加工して現場納品する時代の到来により、これまで木材製品を在庫保管するスペースが不要となり、特に大都市部の工務店はこれらのまとまった不動産を有効活用するようになり、林場や加工場は消えていきました。

建材・住設商品も木材・建材販売店が現場納めしてくれるので、合板、石膏ボード、断熱材等、現場で不足しそうな汎用品を少量在庫するにとどめるケースが大半です。まさか高効率給湯器や高機能トイレが突然入らなくなることなど想定しておらず、そもそもメーカー直送物流が整備され、在庫する必要など全くなかった商品です。

21年から始まった木材製品価格高騰は終焉し、ここへきて実需の弱さを背景とした需給緩和により多くの品目で値下がりが起きています。問屋や販売店は手持ち在庫コストがまだまだ高値に張り付いており容易に値下げできる状況ではありませんが、木材製品の多くはいつでも買えるようになっています。

近年にない木材市況変動を受け行われた全建総連のアンケートを見ると予想通り、輸入木材製品から国産材製品への転換が着実に進んでいることがわかります。今後、1㌦100円前後の急激な円高が訪れればともかく、国産材の供給安定性向上、国産材を活用すべきとの工務店の意識変革もあり、外材から国産材への転換は単にコストだけではないと思います。

アンケート(366社が回答)に回答した工務店の事業規模は令和3年度完工棟数1棟が25.5%、2棟が20.4%、3棟が17.3%、4棟が10.6%で、1~2棟が全体の45%強、1~4棟では全体の75%弱を占めています。また、木材・建材等の調達先(複数回答)は木材・建材販売店からが91.6%と圧倒的で、次いでホームセンターからが25.4%となっています。


上のグラフは令和3年度中に完工させた工事における部材ごとのおおよその国産材使用割合を75%未満、50%未満、25%未満、0%で選択したものですが、柱材、土台等はともに75%以上国産材との回答が50%を超えています。令和4年度も同様の傾向が続いていると予想されます。

外材製品から国産材製品に転換した比率(下グラフ)は柱材45.1%、横架材44.5%、土台等39.9%、羽柄材42.6%、面材(合板等)33.6%。内装材・造作材も32.8%が転換した一方、木材以外へのシフトも9%ありました。これまで杉、桧KD材・構造用集成材による梁桁材比率は小さく、多くは米松KD・構造用集成材、レッドウッド構造用集成材でしたが、国産材転換がかなり進んだことがわかります。ただ、大手ビルダー、住宅会社は供給安定性を考えた時、引き続き米松やレッドウッド等が主流で、工務店等の事業規模で異なるとみられます。


主な樹種(複数回答)のうち無垢材では、柱が杉79.9%、桧65.9%。横架材が米松64.8%、杉55.2%、桧29%。土台等が桧81.7%、杉18.9%、ベイツガ10.8%。羽柄材が杉75.2%、桧36.6%、米松32.3%、ホワイトウッド24.5%。
一方、集成材では、柱がホワイトウッド45.7%、杉40.7%、米松20.1%。横架材が米松41.2%、杉33.2%、ホワイトウッド31.8%、レッドウッド19%、桧11.8%、国産カラマツ10%。土台等が桧36.4%、ベイツガ22.7%、杉20.5%、米松14.8%、ホワイトウッド12.5%。羽柄材が杉38.3%、ホワイトウッド35.7%、桧17.4%。

樹種の選定(複数回答3つまで)は、工務店自らが68.7%、木材・建材販売店からの提案が42.8%、プレカットからの提案が28%など。工務店自らが積極的に樹種転換を進めたといえ、樹種材種へのこだわりはそれほどないのではと思われます。

こうした国産材への転換は短期の価格・供給といった一過性の変動に起因するものではなく、前述したように多くの関係者が国産材活用を意識し始めたことも関係しています。さらに適切な木材人工乾燥(KD)技術や製品精度の向上、集成材、LVL、CLT等の新しい木質材料の普及が国産材転換の原動力になっていると思います。

出典:全国建設労働組合連合会(全建総連)「工務店の国産材利用実態調査アンケート」PowerPoint プレゼンテーション (zenkensoren.org)

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