一般社団法人 ウッドマイルズフォーラム 藤原 敬
第4回 木材を使えば森林が減る?森林のガバナンスとサプライチェーン管理
前回まで、「循環しない異常な社会を子孫のために循環社会にするため」、「大気中の炭素を固定し、化石資源の利用を削減する木材を利用が大切!」という話をしてきました。「どんどん木材を使って地球に貢献しましょう!!」なんですが、どんな木材も本当に循環資源なの?
この点を少し考えてみましょう。
木材が循環資源である理由
下の図は、政府広報オンラインの「木材を利用して、元気な森林を取り戻そう!」というページに掲載してあるものです。お借りしています。
図1 木材が循環資材である理由 (政府広報オンラインの「木材を利用して、元気な森林を取り戻そう!」から)
多面的機能を持った森林を、伐採して、適材適所につかい、炭素の固定などをはかる。そして、伐採した箇所に植林し、下刈りし、育てて、間伐し、その過程で山村は活性化し、森林多面的機能を発揮し、ふたたび伐採して、適材適所につかう。「どこからみても循環資源です」ネ。
利用木材の由来
みなさんは、周りにある木材がどこから来たか知っていますか?家のテーブル、椅子、家の壁の木材・・・。「あの山から伐ってきた木材で、床の間の柱をつくったんだよね!」、という人もいるかもしれません、が、殆どそういう人はいません。工務店(かプレカット事業者)が市場で、高品質で安い、立派な木をえらぶ。どこの木かは普通は解りません。どこの国で伐採された木材かも解らないケースも。
図2 木材が循環資材でないリスク (図1から藤原が作成しました)
そうですね、しっかり管理され、跡地が再生されている森林から生産された木材は循環資材ですが、どこから来た木材かわからないのでは、伐採された山がそのあとが放置されていたり、最悪の場合違法伐採木材された木材かもしれません。
少し昔の話ですが、「インドネシアで伐採される木材の半分は違法伐採、ロシア材の20%は違法伐採」といったデータがあります。(環境省:世界の森林な刻々と減少しています。)
循環木材であることを知るには?
それでは木材を使うとき、どんなことに注意したら循環木材を利用することになるのでしょうか?
クリーンウッド法
我が国では2017年に、合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(通称「クリーンウッド法」)ができました。
図3 クリーンウッド法の概要 (「クリーンウッド法」でどうなるー合法木材供給事業者認定団体研修(2016/7/26)から)
その法律によると、①木材供給事業者は(上の図の真ん中右)、「木材等を利用するに当たっては、合法伐採木材等を利用するよう努めなければならない」という(努力)義務が課せられ[5条]、②合法伐採木材等の利用を確保するための措置を適切かつ確実に講ずる木材関連事業者は、登録により「登録木材関連事業者」という名称を用いることができる[8条、13条1項]とされています。
合法伐採木材って
上の図の上の「定義」という欄に記載されているように、合法伐採木材は、「我が国又は原産国の法令に適合して伐採された樹木を材料とする木材及び当該木材を加工し、又は主たる原料として製造した家具、紙等の物品」なんだそうですけど、どうしてそれが解るのでしょうか?
図4 合法伐採木材を証明する納品書の例 (林野庁のクリーンウッド法の概要ページに掲載されていました)
図4は林野庁の関連ページにでていた、木材を譲り渡す際に用いる書類の一例、なんだそうです。もしも、木材業者のかたから合法伐採木材を購入しよう、と思ったら、「納品書に合法伐採木材であることを証明してくれませんか?」と聞いて下さい。ポイントは二つ。①自分の会社のあとに、合法木材関連事業者登録番号など(業界団体認定番号というのもあります)が記載してあり(ちなみにクボデラ(株)の場合は一般社団法人埼玉県木材協会が認定した埼玉県木協合法第157号ですね)、そして②「合法性が確認できたものです」といった記載があること。
是非確認して下さい
森林認証木材
図5 森林認証製品の表示マーク
もう一つ、合法木材を確認する方法は、欧州発のFSC(森林管理協議会) 、PEFC(SGEC)緑の森林認証会議)といった森林認証木材です。こちらの方は、合法伐採木材だけでなく、木材が生産された森林の持続可能性を保証するモノです。どこがちがうのかな?
伐採時点の合法性だけでなく、森林のもたらすその他の便益が守られているか、作業過程の労働者の権利や労働環境、先住民の権利、などが社会的な便益がまもられているかどうか、それらのことが確り管理されているかなど(FSC森林管理認証)がチェックされています。
森林認証木材は森林の管理が適切に行われているか?といチェック(FM認証)、木材事象者としてFM認証された森林を出発点とした木材であるということを証明することができる、CoC認証という二つのシステムによって実施されています
以下の表はFS認証面積、CoC認証された事業者の数の推移です。FSCとSGECをあわせて面積で250万ヘクタール、企業数で2千5百ほど。少しずつ増えています。
図6 消費者と森林ガバナンスを結ぶ森林認証システムー日本における現状と課題(2021/6/15)から
木製品を買う場合パンフレットの図5のような森林認証の印がついているか、購入先がCOCの認証をもっていて、その製品が森林認証製品かどうか、確認して下さい
環境にやさしい木材を利用をするために
森林認証については1990年代からはじまる長い時間がありますが、図6にあるように日本の森林認証された森林は全体の1割程度です。東京オリパラなどで新国立競技場を建設するときに各都道府県の森林認証木材が要求されたりして増えてはいますが、もう少しですね。このページをご覧のクボデラ(株)に関係する木材の製品に興味をを持ちの方だともいます。クボデラさんも今年度はCOC認証を取得されるようです。どんどん購入する木材に森林認証や合法木材を要求して下さい。
日本全体が循環社会になっていく中で、木材が主役となる大切な一歩です。
執筆者のご紹介
1947年12月6日生まれ。
1972年5月林野庁入庁
林野庁(海外林業協力・林産物貿易・国有林業務など)、国際協力事業団、広島県林務部、独立行政法人森林総合研究所などに勤務
その後、社団法人全国木材組合連合会、全国木材協同組合連合会、林業経済研究所などに勤務
現在は、一般財団法人林業経済研究所フェロー研究員、一般社団法人ウッドマイルズフォーラム理事長、一般社団法人緑の循環認証会議評議委員および専門委員、一般社団法人全国木材組合連合会相談役など
2004年4月、東京大学において学位論文「持続可能な森林管理」の地球的なレジーム形成と木材貿易に関する研究」を執筆し博士(農学)取得。日本森林学会、森林計画学会、林業経済学会、環境経済・政策学会に所属
独自にwebサイト「持続可能な森林経営のための勉強部屋」を立ち上げ、地球環境の視点から、日本の森林と木材を考える産官学民の情報交流広場を運営しており、1999年から毎月1回ニュースレターを配信。これまでに260回を数える(2021年4月現在)
http://jsfmf.net/index.html