令和4年度 JAS構造材実証支援事業が公表されました
一般社団法人全国木材組合連合会は22年4月7日、「令和4年度JAS構造材実証支援事業」を公表しました。同事業は今年度で4年目を迎えますが、業界等の関心が高く、毎年、あっという間に予算枠に達してしまうほどです。
今年度事業は前年度と比べ、いくつか変更点がありますが、これまで中断面以上であったJAS構造用集成材に小断面構造用集成材(集成管柱、集成土台等)が追加されました。また、構造用合板、構造用パネル(パーティクルボード、MDF、OSB等)が追加されました。
一方、これまで構造材以外のJAS品目として補助対象となっていたその他の林産物JASという項目がなくなりました。ただし、JAS構造材の各品目は非構造部に使用したものであってもJAS構造材として扱われます。
同事業の概要を説明します。
JAS構造材活用宣言事業について
まず、同事業では事前にJAS構造材活用宣言事業に基づいて、「活用宣言」への登録が必要となります。活用宣言への登録は下記のURLに書式がありますので参照してください。活用宣言の対象者は、木造建築物の施工関係者(施主、設計者、施工者、木材関連事業者)ですが、実際に施工に携わる関係者の登録が良いと思います。
全体概要
概要・募集要領 活用宣言事業 JAS構造材実証支援事業 (jas-kouzouzai.jp)
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活用宣言要綱
R3ho_jas_sengen-youryou-2.pdf (jas-kouzouzai.jp)
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JAS構造材活用拡大宣言登録申請書
01-2021JAsengen-yoshiki1.pdf (jas-kouzouzai.jp)
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誓約書
2022jas_seiyaku.pdf (jas-kouzouzai.jp)
合わせて、会社概要の分かる書類・資料:以下のいずれか(会社の実態が判るもの)※履歴事項全部証明書、ホームページの会社概要の印刷物、会社紹介パンフレット等。
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JAS構造材活用拡大宣言
01-2021sengen04.pdf (jas-kouzouzai.jp)
上記書式の作成は短時間で完了できると思います。これらの活用宣言に関する書式を下記へ送付してください。受付期間は令和4年4月1日から令和5年3月17日までです。後記しますが、助成事業への第1回目の申請が4月11日からで、早い者勝ちで受理していくと思われますので、JAS構造材活用宣言も迅速にすませる必要があります。
〒107-0052 東京都港区赤坂2-12-13 UHA味覚糖赤坂ビル 3F 一般社団法人 全国木材組合連合会 JAS構造材実証支援事業事務局 Tel:03-6550-8540(平日10:00~17:30)
JAS構造材実証支援事業について
対象物件
・建築確認申請または建築工事届の建築主が国に該当せず、建築物の用途が本事業の規定に沿う建築物。
・3階建て以下の戸建て専用住宅及び事業併用住宅を除く建築物。
・建築物において基礎より上部の躯体部分の建築工事に本事業以外の国、地方公共団体、公的機関からの助成を受けていない建築物。
・助成対象の床面積(4階建て未満の建築物の非木造部分を除く)が10㎡を超える建築物。
・指定する構造部位でJAS構造材を使用した建築物。
・建築主が事業の成果に公表に同意した建築物。
・林野庁が作成した「建築物に利用した木材にかかる炭素貯蔵量の表示に関するガイドライ
ン」により施工者が炭素貯蔵量を算出する建築物。
基本的に民間建築物であると考えてよいでしょう。3階建て以下の住宅は対象外ですが、4階以上の住宅(マンション等)であれば該当します。
助成金の二重取りはできません。地方公共団体や林野庁以外の省庁の補助金を使うことはできないので、どの助成事業が最も貢献できるかを判断して申請する必要があります。
ガイドラインに基づく炭素貯蔵量の算出はこれまでなかった点ですが、脱炭素社会の実現に向けての木造化の取り組みということで組み込まれました。ガイドラインは下記URLからお入りください。エクセルシートも用意されています。
mieruka-1.pdf (maff.go.jp)
対象となるJAS構造材
① 機械等区分構造用製材(目視等級構造用製材乾燥処理材については下記参照)
② 枠組壁工法構造用製材および枠組壁工法構造用たて継ぎ材(2×4製材)
③ 直交集成板(CLT)
④ 構造用集成材(小・中・大断面構造用集成材)
⑤ 構造用単板積層材(構造用LVL)
⑥ 構造用合板
⑦ 構造用パネル(PB、OSB、MDF等)
指定する構造耐力上、主要な部分(構造部)の全部または一部に、上記1つ以上のJAS構造材の品目を使用する。指定する構造部は①が構造部の柱、梁桁、トラス、土台。②、③、④、⑤が構造部の柱、壁、床、屋根、横架材。
目視等級区分構造用製材(乾燥処理)については、機械等級区分構造用製材がJAS構造材と区分された場合のみ、JAS構造材として扱い、目視等級区分構造用製材(乾燥処理)を単独でJAS構造材とすることはできません。
前記したように、非構造部に使用したものであっても上記7品目はJAS構造材として扱います。
前年度までは構造用集成材は中断面以上となっていましたが、新たに小断面構造用が加わりました。また、⑥構造用合板、⑦構造用パネルが追加されました。
一方、前年度まで、調達費の1/2が補助されていた「その他の林産物JAS」という考え方は変更されており、JASであっても造作用製材、下地用製材、目視等級区分構造用製材のうち未乾燥材(グリン材)、造作用集成材、造作用LVL、普通合板、フローリングは助成対象から外れることになります。
助成金額と金額の計算方法
JAS構造材として区分された機械等級区分構造用製材および目視等級区分構造用製材(乾燥処理)、2×4製材、構造用集成材、構造用LVLは、使用材積1立方㍍当たり6万6000円が補助されます。前年度は5万円でしたが、木材価格高騰を反映して引き上げられたものとみられます。
CLTは、使用材積1立方㍍当たり14万円が補助されます。これは前年度と同額です。
構造用合板、構造用パネルは、調達費(木材代金+プレカット加工費+施工現場までの運搬費)の1/2が補助されます。
助成額は上記単価で計算しますが、①事業申請時算出額、②交付申請時算出額、③実際の調達費のうち、一番低い金額が助成額となります。木材各変動等を踏まえた算出が必要になります。一つの建築物で複数のJAS構造材を使用している場合は、それらを合計することができます。
助成上限
助成対象階の床面積の計が1000㎡以上、または助成対象階が4階以上の建築物は3000万円が上限です。助成対象階が3階建て以下の場合は1000㎡以下が1500万円、1000㎡以上であれば3000万円となります。階数にはJAS構造材不使用階を除きますので、4階建てであってもJAS構造材を使用していない階があれば4階建てとはなりません。床面積についても同様で、JAS構造材不使用面積が除かれます。
事業フロー
同事業の申請受付開始は22年4月11日から、締め切りは5月25日。全木連では今回を第一次募集とし、6月ごろ第二次募集を行うとしています。
事業申請(JAS構造材実証支援事業申請書、様式第1号)の提出先は申請する物件の住所にある地域木材団体です。下記URLを参照してください。
問い合わせおよび申請窓口 実証支援事業 JAS構造材実証支援事業 (jas-kouzouzai.jp)
提出された書式に対し、事務局は申請受付書(JAS構造材実証支援事業受付書、様式第2号)、審査を経て結果通知書(JAS構造材実証支援事業採択通知書、様式第3号)が通知されます。これが届いたら事業開始となります。
施工中、施工後にやるべきこととして、荷受け検収写真、施工写真の撮影が必要です。施工写真では助成対象木材の写真を、JAS構造材の種類ごと、部材種ごと(柱、梁、壁、床等)に撮影し、JASマークのあるものはマークがわかるようにアップの写真も撮影する等が指示されています。下記のURLに写真撮影の手引きが掲載されています。
Ž˜®qnK M20220329.xlsx (jas-kouzouzai.jp)
事業者は助成対象の建て方終了後、22年9月30日までに交付申請(JAS構造材実証支援事業助成金交付申請書、様式第6号)を地域木材団体に提出、交付審査を経て決定通知(JAS構造材実証支援事業助成金交付決定通知書、様式第7号)が出されます。事業者は全国木材組合連合会に請求書(JAS構造材実証支援事業交付金請求書、様式第9号)を提出し、助成金が支払われます。
全国木材組合連合会からの結果通知書(様式第3号)の日付以前に発注された木材は、助成対象になりませんので注意してください。
事業申請の際に必要な提出物
・様式第1号(JAS構造材実証支援事業申請書、様式第1号)
・建築工事業または大工工事業の建設業許可証の写し
・建築確認申請書のコピー(受付印があること)
・申請物件の助成対象となるJAS構造材が判別可能な配置図・平面図・立面図・軸組図・梁伏せ図等(A3サイズ)
・助成金算定表(エクセルデータ)及び見積書(JAS構造材の予定使用数量、予定調達額がわかる資料)
・助成金振込先の銀行口座情報
*申請数が3件以上の事業者は別途提出物があります。
助成金交付申請の際には合法木材であることがわかる資料が必要になります。書類は必ず片面印刷し、審査で提出書類のPDF化をしますので、ホチキス止めなどをしないようにしてください。
まとめ
建築物の具体的な案件が目の前にないと活用できない事業ではありますが、例えばCLTの助成率14万円(立方㍍当たり)というのは、CLT代金がほぼゼロになることを意味します。
もちろん、助成金額の上限はありますが、設計者、ビルダー、工務店にとり、こうした事業を活用して非住宅木造建築にチャレンジすることは経験という大きな意味を持ちます。
ぜひ、ご検討することを提案します。当社でも申請等、材料調達等、お手伝いできることがあります。ご相談をお待ち申し上げます。