令和6年度林野庁事業予算を読む

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令和6年度林野庁事業予算を読む

林野庁の平成6年度概算予算が決定しました。令和6年度概算予定額は3003億円(前年度比1.8%減)。このうち公共事業費が1982億円で、内訳は一般公共事業費1877億円(内訳は治山事業費624億円、森林整備事業費1254億円)、災害復旧等事業費105億円。非公共事業費は1021億円(同5.2%減)。これに令和5年度補正追加額が1401億円(内訳は公共事業費1077億円、非公共事業費323億円)が加わり、合計は4404億円となっています。

R6kettei-20.pdf (maff.go.jp)

令和6年度予算の主要項目別概要は下記の通りです。建築物の木造・木質化支援等の民間向け非公共事業は、主に森林・林業・木材産業グリーン成長総合対策にあります。また、林業・木材産業国際競争力強化総合対策及び新規に事業化された花粉症解決に向けた緊急総合対策にも国産材活用に関する事業が盛り込まれています。

森林・林業・木材産業グリーン成長総合対策
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林業・木材産業国際競争力強化総合対策(一部公共、令和5年度補正)
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林業の担い手の育成・確保(林業従事者等確保緊急支援対策、令和5年度補正)
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花粉症解決に向けた緊急総合対策(一部公共、令和5年度補正)
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森林整備事業(公共)
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治山事業(公共)
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農山漁村地域整備交付金(公共)
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治山施設の設置等による防災・減災対策(公共)
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森林整備による防災・減災対策(公共)
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災害復旧等事業(山林施設)(公共)
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このうち令和6年度重点事項として下記の各事項を挙げています。カッコ内の予算額は令和6年度当初で、別途令和5年度補正が加わります。また、複数事業で予算額が重複する場合もあります。

燃油・資材の森林由来資源への転換等対策(令和6年度当初3億円)。燃油・資材の価格高騰に対応するため、きのこの生産施設の省エネ化や生産資材導入を支援するとともに、木質バイオマスの収集・運搬、木質燃料の製造・熱利用に向けた取組等を支援。

カーボンニュートラルの実現等に向けた森林・林業・木材産業によるグリーン成長のうち、森林・林業・木材産業グリーン成長総合対策(144億円)。カーボンニュートラル等を実現し、花粉発生量の削減にも資するよう、川上から川下までの森林・林業・木材産業政策を総合的に推進。森林・林業・木材産業グリーン成長総合対策の内訳は下記。

ア 林業・木材産業循環成長対策(64億円)
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イ 林業デジタル・イノベーション総合対策(4億円)
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ウ 建築用木材供給・利用強化対策(10億円)
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エ 木材需要の創出・輸出力強化対策(3億円)
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オ 森林・林業担い手育成総合対策(47億円)
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カ 「新しい林業」に向けた林業経営育成対策(2億円)
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キ 林業・木材産業金融対策(4億円)
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ク 森林・山村地域振興対策(10億円)
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カーボンニュートラルの実現等に向けた森林・林業・木材産業によるグリーン成長のうち、花粉症解決に向けた緊急総合対策(一部公共、60億円)。10 年後に花粉発生源となるスギ人工林を2割減少させることを目指し、花粉が多いシーズンでも現在の平年並みの花粉量までとなるよう、花粉症対策初期集中対応パッケージに掲げられた、スギ人工林の伐採・植替え等の加速化、スギ材需要の拡大、花粉の少ない苗木の生産拡大、林業の生産性向上及び労働力の確保、スギ花粉飛散量の予測・スギ花粉の飛散防止の取組を推進。

カーボンニュートラルの実現等に向けた森林・林業・木材産業によるグリーン成長もうち、森林整備事業(公共、1254億円)。森林吸収源の機能強化・国土強靱化に向けた間伐、主伐後の再造林、幹線となる林道の開設・改良等の推進に加え、花粉発生源対策としてスギ人工林の伐採・植替え等を推進。

カーボンニュートラルの実現等に向けた森林・林業・木材産業によるグリーン成長のうち、治山事業(公共、624億円)。豪雨・地震等に起因する山地災害から国民の生命・財産を守るため、流木対策や機能強化対策の充実、流域治水との連携拡大など、国土強靱化に向けた取組等を推進。

カーボンニュートラルの実現等に向けた森林・林業・木材産業によるグリーン成長のうち、農山漁村地域整備交付金(公共、770億円)。地方の裁量によって実施する農林水産業の基盤整備や農山漁村の防災・減災対策に必要な交付金を交付。

防災・減災、国土強靱化の推進のうち、治山施設の設置等による対策(公共、令和5年度補正268億円)。豪雨・地震等に起因する山地災害から国民の生命・財産を守るため、山地災害危険地区や氾濫した河川上流域等において、流木・土石流・山腹崩壊の抑制対策等を推進。

防災・減災、国土強靱化の推進のうち、森林整備による対策(公共、令和5年度補正172億円)。森林の防災・保水機能を適切に発揮するため、道路など重要なインフラ施設周辺や氾濫した河川上流域等での間伐、再造林、幹線となる林道の開設・改良等の対策を推進。

令和5年5月から7月までの豪雨等による災害被害の復旧・復興のうち、災害復旧等事業(公共、105億円、令和5年度補正332億円)。被災した治山施設、林道施設等の速やかな復旧等を実施・支援。

注目される木材活用の向けた川下施策については下図の森林・林業・木材産業グリーン成長総合対策のうち「建築用木材供給・利用強化対策」が主体となります。事業目標として令和4年度の国産材供給量3500万立方㍍を令和12年までに4200万立方㍍へ20%増加させるとしています。

林野庁は建築物の木造化・木質化に活用可能な補助事業・制度等一覧(令和6年度事業・制度 概算要求版)を取りまとめています。このうち林野庁関係の民間事業者を対象とした主な補助事業は次の通りです。

森林を活かす都市の木造化等促進総合対策事業のうち都市における木材需要の拡大

都市部における木材利用の強化等を図るため、建築用木材の利用実証の取組を支援。木質耐火部材、JAS構造材、内装材、木製サッシの調達費等への助成。非住宅、集合住宅及び4階以上の戸建住宅。継続事業の「都市における木材需要の拡大事業」がこれにあたります。

森林を活かす都市の木造化等促進総合対策事業のうち強度または耐火性に優れた建築用木材の製造に係る技術開発・普及

建築物における実証を通じて、高い普及性が見込まれる新たな技術等の開発や再検証・改善を行う事業を支援。継続事業の「都市木造建築技術実証事業」がこれに該当します。

CLT・LVL等の建築物への利用環境整備事業のうちCLTを活用した先駆的な建築物の建設等支援

協議会方式によるCLT建築物の設計・建築実証の取組を支援。継続事業の「CLT活用建築物等実証事業」がこれにあたります。

花粉の少ない森林への転換促進対策のうち花粉症対策木材利用促進

スギJAS構造材等を利用した建築を行う事業者に対し、これらの使用量に応じた部材調達費や設計費の一部を支援。詳細未定。

木材需要の創出・輸出力強化対策のうち地域における非住宅木造建築物整備推進

地域における建築物の木造化・木質化を促進するため、建築物での木材利用促進に取り組む地域協議会等に対して、専門家を派遣して技術的に支援。詳細未定。

最も人気があり長年にわたり補助実績を持つ「JAS構造材実証支援事業」「外構部の木質化支援事業」は上記事業の建築用木材供給・利用の強化 (木材製品の消費拡大対策、JAS構造材の建築物への利用実証・普及、CLTを用いた中高層・非住宅建築物の実証、外構部の木質化の推進等)に該当し、令和6年度も当該事業が継続されます。

次に「花粉症解決に向けた緊急総合対策」を見ていきます。事業イメージは①発生原対策、②飛散対策、③発症・曝露対策に分かれ、川下施策としてはスギ材の需要拡大が盛り込まれ、

住宅分野におけるスギJAS構造材等の利用促進、建築物へのスギ材利用の機運の醸成を進めていきます。

おそらくこの事業が今年度まで実施されてきた「JAS構造材実証支援事業のうち建築用木材の転換促進支援事業」の後継になるのではないでしょうか。

上表は今年度までの林野庁の建築物に関する補助事業の位置づけです。

重点施策は非住宅建築物への木材利用促進であり、JAS構造材実証支援事業では非住宅、集合住宅及び4階建て以上の住宅木造化に対し助成されるのに対し、3階建て以下の住宅は建築用木材の転換促進支援事業が担当してきました。両者の補助額には大きな差があり、建築用木材の転換促進支援事業は補助額がかなり少ないという面はあります。

林野庁、国土交通省等が推進する建築物に対する補助事業の品質基準はすべてJAS適合です。新設住宅においても住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)のフラット35等を活用する場合、JASが重要になります。JAS材の普及はまだ低いのが現実ですが、25年4月施行の建築法制度、省エネ法制度改正で確実にJASが必要になると考えます。

林産物JASは唯一の公的品質基準で、寸法や品質だけでなく、KDや木材耐久性についても明確な規定があること、JASを指定する木造建築は増えている(住宅金融支援機構のフラット35等)こと、JAS材を使用する公的補助事業が増えていること、改正建築基準法で2階建300平方㍍以下は仕様規定の構造計算が必要となること、改正建築基準法で3階建以上は許容応力度計算による構造計算が必要となること、ZEHで太陽光パネル、トリプルサッシが普及し壁量基準が変わることなども勘案すると、JAS材の供給安定性確保は今後、木材製品調達で必須になると思います。

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